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「ビジネスは地の利を活かせ!」技術者目線で見るAI活用の現状と未来

KDLと株式会社Nextremer(以下、Nextremer)は、Nextremerが開発するAIを活用した対話システム「minarai(ミナライ)」を用いて、顧客の質問に自動的に回答する「ヘルプデスク向け対話型Chatbot」や商談の会話を分析する「営業支援ソリューション」を共同開発しています。今回は、同社の代表取締役CEO 向井永浩氏とKDLで関連システム開発を統括する取締役 村岡正和が、「技術者目線で見るAI活用の現状と未来」について対談させていただきました。

「AIは魔法ではない」が現場では周知されてきた

お2人から見た今のAI業界の現状はいかがでしょうか?

Nextremer 向井氏(以下、向井)

AIの中でも「対話システム」の業界でいえば、時代背景にもマッチした需要が出てきたと思っています。

20年前くらい前は、こんなのがあったら面白いね、という感じでしたけど、今は人口減少による労働力不足問題に対して対話システムを使って補っていくという流れがきていて、チャンスだと思っています。さまざまな業界において必要とされていると感じますね。

ただ、例えば対話のログからAIで特徴をみつけて自動的に辞書を作るような部分は、自然言語処理的にも期待は高くて需要も高いのですが、なかなか完璧にはできていないですよね。世間からはそれができているように思われている感じも受けています。

その点で期待と現実のギャップを感じてはいますが、社会全体としての必要性は高まってきていると思います。

Nextremer 向井氏
神戸デジタル・ラボ 村岡
KDL 村岡(以下、村岡)

現状は、最近の2~3か月では対話エンジンを使ったシステムのひとつとしてChatbot(AIを利用し、人間との対話やメッセージのやりとりを行うコンピュータープログラムサービスの総称。読み:チャットボット)に関する引き合いが急激に増えている状況です。向井社長がおっしゃるように、AIというキーワードが産業的にホットになって、ニーズが高くなってきていることを肌で感じているところですね。

お客様とのヒアリングの中で「Chatbotがなぜ必要なのか」ということを聞いてみると、どの業界でも人手不足が恒常的に語られるようになってきていて、単純なコールセンターの問い合わせ対応のようなものを、純粋に負荷軽減したい、少ない人数で効率的にやっていきたいということなんですね。

Chatbotに全部任せてコストを0にしたい、というような要望はなくなりました。例えば10人でやってきたことが7人に減ると3割のコスト削減になる。そういうところをトライアルで狙ってみたい、という現実的なお客様が増えてきた印象です。

AIが夢のような魔法の道具として新聞やメディアで語られる一方で、現在お問い合わせいただくお客様はそんな夢のようなことは考えておらず、現実的な導入を考えておられます。そういう意味では、対話システムにおいてはいよいよ地に足がついてきたという感覚があります。

向井

そうですね。そういう現状を受けて、我々のポリシーとしては、「あったら面白い」という"fun to have"から、「ないと困る」、つまり"need to have"にしなくてはいけない、という想いが強くあります。なので、まずは社会実装しなくてはいけない。

もちろん新しい技術へのチャレンジもしますが、エンジニアとして、今ある技術でITシステムとしての対話用AIを作って、実際に使えるように社会実装を進めていることが我々の強みなのだと思いますね。 

「対話エンジン」は数多くありますが、ITシステムとして「使える対話システム」を現実的に社会実装している企業は、意外と少ないと感じています。

村岡

そうですね。向井社長がおっしゃるようにNextremerさんの対話システム「minarai」は" AIエンジン"という形で捉えられていますが、実際には対話"システム"に近いことが非常にポイントだと思っています。

対話"システム"というのは、問い合わせのテキストに対して単純に言語を返すだけの会話のやりとりを担うだけではなく、様々な拡張を前提として作られているという意味です。

例えばサッカー選手の成績を問い合わせると、DBから引っ張ってきて返答するなどの場合、システム開発としてはDBとのつなぎ込みなどいろいろなロジックを対話エンジンと一緒に組み込まないといけない。そういう時に「minarai」は、容易に組み込めるインターフェースを持っているわけです。単純な会話のやりとりをするための対話"エンジン"ではなく、ビジネス的なシステム連携を前提とした設計になっていることは、我々のようなSIが開発するシステムと非常に親和性が高い。

実際に「minarai」の事例を見ると、様々な産業分野で迅速にChatbot・音声対話システムを提供して、実績をあげてきておられます。このあたりはビジネスメリットが非常に大きいと考えています。

「ソフトウェア」という地の利を活かしてビジネス実装する

AIの未来はどのように考えておられますか?

向井

対話システムは、ソフトウェアですよね。AIの業界はソフトウェアファーストでいかないとなかなか発達しないのではないかと思います。

「ビジネスは地の利を活かせ」という近江商人のことばがありますが、我々ソフトウェア屋の地の利を活かすというのは、ソフトウェア技術が車とかロボットのような、日本が競争力を持つ、よりシリアスなハードウェアに要素部品のように融合していくことだと僕は考えています。あくまでソフトウェア屋としてソフトウェアファーストで対話エンジンを作り、ハードウェアに融合していきたいと。

我々は今、そういうハードウェアの研究分野で対話エンジンを使ってもらっていて、2019年以降に発売するプロダクト、例えば「話す車」などに搭載されるように研究を進めています。

ハードウェアには、「インテル・インサイド」じゃないですけど、我々の「対話エンジン・インサイド」のようなところを狙っていきたいですね。それがソフトウェア屋としても地の利を活かすということじゃないでしょうか。

とはいえ、研究を進めるためには資金も必要ですから、現時点で使えるものを、求められているところにどんどん導入しながら、同時にハードウェアとの融合も狙っていければと考えています。

・・・あんまり風呂敷広げている感じじゃないですね笑。

村岡

現実的ですよね(笑)。さすがに、地に足をつけている現場の方ならではのコメントだなと思います。

20年近くソフトウェア屋をやって、いろいろな業界のITの直近の歴史は知っている僕から見ると、僕が若いころは汎用機からクラウドサーバーに移行する、という時代で、その後グリッドコンピューティングという言葉からクラウドコンピューティングという言葉が出てきました。そしてビッグデータ、今はAI、IoTという風に移り変わったのを見てきました。つまり何度もインフラのアップデートが繰り返されてきたわけです。

今のAI自体は「ビッグデータ」というキーワードから派生的に認識されようとしていると感じていますが、それは今までにないくらいのアップデートなのではないかと思っています。

では、AIが今までのIT技術の何をアップデートするのか?が気になりますよね。

技術者の目線でAIとは何なのか、何に使うのかを一言でいうならば、「人が持っているノウハウをコンピューターに移すテクノロジー」という風に僕はよく答えています。

Chatbotもそうですが、オペレーターの経験やノウハウを対話エンジンにコピーして、その人と同じように働くコンピューターを作る、というのが今のAIの役割です。私たちは、その「対話」に特化したものを目指しているわけです。

これから産業でAIが実装されていくのは、当面、単純労働からだんだん人間の知識や経験、作業手順みたいなものをAIがコピーして、コンピューターで実現する未来になってくると思います。SIの我々からすると、それをクライアントの要望に応える形で実現することです。

Nextremerさんは、「会話」という様々なビジネスジャンルや言語でも使われる、汎用的な作業に特化したものを作っておられる。つまり、あらゆるジャンルにビジネス的にリーチできる可能性があるということです。 

向井社長がおっしゃるように、日本の強みを活かすなら、産業分野であれば車や精密機械系、重工業などのビジネスシーンで使われていくところが、まずは最初になってくるでしょう。ビジネスに対する投資規模も大きいですし、そういったジャンルから使われていくのが自然だと思います。

使えないと生き残れない?AIは人間のITへの欲求を実現する究極の技術

村岡

最終的には、次のステップでいうとホーキング博士らが警戒している「人間を超える人工知能」が登場するかもしれませんが、技術者からみると、当面その未来は見えないような気がしています。

向井

ソースレベルで考えると、なかなか無理ですよね。

村岡

ただ、先ほど話したその一歩前の、特定の人間の能力・ノウハウをうつしとるところまでは、一部できているとは思います。なので、まずはそこを完成させるところからだと思いますね。正直、10年はかかると思いますが。10年後にそのAIが人間を超えるかどうか考えればいいじゃないかと。

向井

そうですね。狭義の意味でAI=機械学習とするのであれば、機械学習を利用したシステム開発とはどういうものか?というようなことが大事になっていくのではないでしょうか。

村岡

今後のIT企業は 何かしらのAIが取り扱えないと生きていけないと思います。

人間の作業を機械に代行させることは、人間のITに対する本質的な欲求そのもの。例えば今まで電卓で表計算してグラフを紙に書いていたのを、Excelで自動的に関数が計算してグラフにしてくれる、というように便利になり、手間が減りました。

そういう意味ではAIは究極で、人間のノウハウをコピーできていれば、その作業をコンピューターが代わりにやってくれる、という話です。

それを実現できる企業が求められる。逆にいえばそれができないと、これからのIT業界では生き残れないと思いますね。

向井

そこは同じ意見です。どんな業種でも一緒ですよね。初期のITでいえばホストコンピューターの位置付けです。ホストコンピューターを使えないとお客様の要望に応えられなくなる、というようなことと同じで、AIが使えないと遅れてしまうということではないかと思いますね。

村岡

例えばひよこの雄雌を見分けるとか、ピンポン玉の不良品をはじくとか、そういう機械的な流れ作業です。そういうことでも、今は人間がやっています。しかし、それらは延々と特定の作業になるので、カメラで撮影した画像をAIで判定するようなことは機械的にできるわけですよね。

こういった、従来のシステム開発では難しかったことを、深層学習などのアルゴリズムを取り入れることで、実現できる可能性が飛躍的に高まる。AIに対するビジネス変革の活路とはそこに求められているわけです。

その実現にお客様と一緒にチャレンジできる企業、いわゆるAIの関連技術を持っている企業が、これからのITをリードしていくことは間違いないのではないかと思います。

最終的にターミネーターのスカイネット(映画『ターミネーター』シリーズに登場する自我を持ったコンピューター)のようにコンピューターが自律的な意思を持つかどうかは、大学の先生や夢見がちな方にお任せすればいいと思いますね。

我々産業界にしてみれば、コンピューターが意思を持つかどうかではなくビジネスになるかどうかだけの話ですよ。もちろん、そういう時代がもしくるのであれば、世の中はもうひとつアップグレードされることは間違いないでしょう。

僕たちが今それを考えても商売にならないですからね(笑)。

向井

1年前くらい昔はそういう、「スカイネットきますかね」みたいな質問はあったんですけど、最近はそういう感じではなくなってきましたね。

村岡

なるほど、みんなわかってきたのでしょうね。

向井

そうですね。いい意味で、業界もリテラシーが上がってきているのだなと思います。おかげで、以前に比べてやりやすくなってきました。

東京の外でAIを開発することにメリットがある

両社のコラボが目指すものを教えてください

向井

まずは、今一緒に開発しているChatbotを使ったヘルプデスクが、今日の働き方改革の文脈でもキーワードとして挙がっているので、こちらを一緒に推進していきたいと思います。

その一方で将来の展望として、今後はハードウェアと融合していくお話は先ほどお伝えしましたが、実は車のメーカーなどハードウェアの企業は関西に多いですよね。KDLさんはまさに関西の(ソフトウェアの)雄なので、その点でも地の利を活かして一緒に目指したいと感じています。

また、今回調達した資金の90%は、対話システムを開発している高知のAIラボや子会社であるdataremerに費やしています。今後はそこにどんどん人を集めていく予定なので、我々も東か西かと言えば西になりますよね(笑)。

そういったことを通じて、地域活性化も目指していきたいです。

村岡

僕が非常にユニークだと思っているのが、AI開発という拠点を高知という地方に置いていることです。これは向井社長がおっしゃるように地方に拠点を置くことで、結果的に地域活性、地方創生というところに少なからず貢献しますし、付加価値という面においても、例えばAI開発みたいなものは東京で、という固定概念を覆して、高知でやるというのは、産業的にも技術的にもオリジナリティを発揮するのではないかと見ています。

これからの時代、力はあるけれども画一的な「東京」というところを外から見て考えられないと、人と違うオリジナルな仕事は本質的にできない状況になっているように感じています。その点でもNextremerさんは非常に面白いし、これから変革を起こしていくと思っている要因の一つです。

若者が東京に行かなくても最新技術開発に関わることができるのは、地方からすると若者も高齢者にとってもあらゆる面で、メリットがあります。

今は主に開発面でご一緒させていただいていますが、今後はKDLのECやセキュリティを中心としたお客様の中で、そのルートを使ってChatbot、対話システムを拡販していくことも見据えて、営業面でも一緒に進めさせていただければと思っています。

さらに、Nextremerさんが持っておられる深層学習やAI技術と、KDLが特許を持っている関係性技術などの広義のAI技術を融合させてゆくなど、新たなAIを創造するような取り組みも、今後検討いただければと思っています。

KDLは関西拠点ではありますが、営業ルートは全国規模ですし、さらに我々ともにクラウド業者という意味では、市場は地球全体です。日本というドメインに限ったものではない。クラウドの強みを活かして、一緒に世界に認められるサービスを目指していければと思います。

向井

いいと思います。そのまま行っちゃいましょう(笑)。

対話AIの現実的ニーズと次の課題

Nextremer様が進めておられる、対話AIの今の研究について教えてください

向井

研究チームを形成して、対話最適化チームというところでリサーチエンジニアを集めて作っています。例えば、深層学習によってログから自動的に辞書を作る技術や、もっとかわいくしゃべる、などの「キャラ付け」などをシステム側でできる研究をしています。

この開発の課題を一番把握しているのは高知のチームなので、東京のリサーチエンジニアも高知に行ったりして研究を進めているところです。

村岡

結構見えてきてますか?

向井

あとどれだけでできます、というのは難しいですけど、僕は「いける」という感覚がありますね。

村岡

おぉー、いける感覚があるのはすごいですね!

向井

少なくともそのチームはみんな、これは俺らが実現するっていう気持ちで取り組んでいます。

村岡

今五里霧中だと言われると、だいじょうぶかな、と思うけど、見えてきてるというのは本当にすごい。そこは100%ニーズがあるところだと思いますからね。今でも既にそのようなご相談がありますし。

お客様もわかってきていて、誰でも自由に会話ができるBotなんてできないと思っています。ですが、ビジネスでChatbotを使いたいというお客様は、雑談だけで会話が終わってしまったら困りますというという話になります。そういう意味で、minaraiはルールベースを持ってます、というところが好評ですよね。ちゃんとシナリオにそって、「コンバージョンに向け誘導していく」というフローをもっていることを評価してくださいます。

ただ、さらに議論を進めていくと、その中にどれだけ広がりがあるのかという話になります。そうなると、ルールからちょっと外れると「認識できませんでした」ということが多くなってしまいがちです。認識できなかったところを、「もう一度言ってください」ということが多いと離脱が増えてしまう。それをなくしたい。

そこを議論していくと、最終的には会話をしながら次のシナリオが自動的に作られていくのがよい、ということになります。でもそこを自動でというのは、まだ難しいところです。

具体的には(Nextremerの子会社の)dataremerさんが手動でアップデートしていく、という解決法になります。ご納得いただいてはいますが、人手を介さずに自動的に実現したいというのは、もうお客様のニーズとして顕在化しています。でも、どこもまだできていないです。おそらくAppleでさえできていない。

向井

そうですね。できていないと思います。

村岡

その中で、Nextremerさんが先陣を切っていただけるとそれこそ世界レベルですよね。

向井

関西弁とか、神戸っぽくして、とかやりましょうか笑。

村岡

いいですね笑。

我々もビジネスを具体的に回していく中で、どんどんNextremerさんに利益還元させていただいて、研究投資が活発にできるようにお手伝いをさせていただく必要があるところです。

これからもよろしくお願いします。

貴重なお話をありがとうございました。

Nextremer 代表取締役 CEO向井 永浩氏 (むかい ひさひろ)

基幹系のエンジニアを経て、2012年10月に株式会社Nextremerを設立。「対話エンジンを"fun to have"から"need to have"に変える」をミッションとしてAIテクノロジーを活用した対話システムの開発や対話サービスの提供を行う。2015年4月にAIの研究開発を行う高知AIラボを設立。2016年8月には子会社として人工知能技術開発の為の学習データを提供する株式会社dataremerを設立。

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