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スペシャルコラム 成毛 眞 「シリコンバレーは関西だ」

シリコンバレーは関西だ

成毛 眞氏による書き下ろし連載コラムが決定!

KDLは2014年10月3日に創立20年を迎えました。
せっかくだから何か面白いことができないか、と検討した結果、元マイクロソフト社長で戦う投資会社インスパイアのファウンダー、そして現在は日本最強書評集団HONZ代表でありながら自身も数々の著書をベストセラーに送り込んでいる成毛 眞(なるけ・まこと)氏に恐る恐る寄稿を依頼したところ「そんな社外報なんて半端なところでオレに書けと言うのか。よし、書いてやる。」と驚きの承諾を頂き、しかも書き下ろし連載と言うアンビリーバブルな展開となりました。

成毛 眞

HONZ代表。元マイクロソフト社長。インスパイア取締役ファウンダー。スルガ銀行社外取締役。
早稲田大学ビジネススクール客員教授。週刊新潮、週刊東洋経済、月刊クーリエ・ジャポン日経BPネットにエッセイ連載中。産経新聞、週刊朝日などに書評定期寄稿中。
代表的著書に『面白い本』(岩波新書)『大人げない大人になれ』(新潮文庫)など多数。

第1回

関西にこそ日本の未来が!?


 昨今東京では、「マネタイズ」やら「バイアウト」やらを
 念頭に置いたベンチャーがうようよ湧いている。

 こういったベンチャーは登場するのも早いが退場していくのも早い。
 自分たちがやっていることを小回りがきく、
 キャリアと小銭を稼ぐためのビジネスとだけ考え、
 胸躍る壮大な冒険だとは捉えていないからだ。
 そもそものところで間違っているのである。

 ベンチャーは英文字ではventureと綴る。
 手元のジーニアス英和辞典で調べると、
 真っ先に出てくる訳語は「冒険」「危険な試み」で、
 adventureすなわちアドベンチャーからadの2文字が取れただけ。

 だからベンチャーは興すことも続けることも、
 スペクタクルでなくてはならないのだ。

 では、誰がそのベンチャーを体現しているだろう。
 スティーブ・ジョブズか、ビル・ゲイツか、
 はたまたマーク・ザッカーバーグか。

 たしかに彼らもベンチャー魂あふれる起業家たちではある。
 しかし、我々は、歴史に学ばなくてはならないし、
 関西にも学ばなくてはならない。
 なぜならばこの原稿は、関西ベンチャーの雄、
 神戸デジタル・ラボのメルマガに掲載されるからだと
 北海道出身で東京在住40年のボクはここに断ずる。

 いや実際に、ボクが言うまでもなく
 関西はベンチャーらしいベンチャーの宝庫である。
 パナソニックも任天堂も京セラも、オムロンも日本電産も
 村田製作所も武田薬品工業もダイハツもキーエンスも
 ワコールも王将フードサービスも関西からしか生まれなかっただろう。

 朝の連ドラ「マッサン」で再び注目を浴びている
 サントリー創業者の鳥井信治郎は「やってみなはれ」と言い、
 堀場製作所創業者の堀場雅夫は「おもしろおかしく」と言った。
 関西を代表するふたりの経営者の発言は、ベンチャー魂の表れだ。
 このふたつの名言は、ジョブズの「Stay hungry, stay foolish」
 よりも注目されなくてはならない。

 そうなのだ。思いついたことをためらいなく、
 おもしろおかしく取り組むことこそが、ベンチャー魂なのである。

 だからボクはときどき思うのだ。
 ジョブズやビル・ゲイツやザッカーバーグは、
 もしかしたら、米国の関西出身だったのではないかと。

 このメルマガ連載では
 ベンチャー企業と関西人気質について考えてみたい。
 いやもう無理矢理にでも
 関西にこそ日本の未来はあるのだと断言してみたいし、
 ボクの関西出張といえば夜の京都祇園町通いだろうとの
 疑いをここで晴らしたい。

第2回

スティーブ・ジョブズと関西の
意外な関係


 スティーブ・ジョブズが何者なのかについては説明が要らないだろう。
 アップルの創業者のひとりであり、亡くなる直前までCEOを務めていた
 伝説の人物だ。

 ジョブズと関西の縁は深い。1970年の大阪万博では展示されていた
 ワイヤレスホンに並々ならぬ関心を示していたとか、"ロケットササキ"
 として知られるシャープの佐々木正氏にアドバイスを仰いでいたとか、
 エピソードは探せばいくらでも出てくる。いっそのこと、関西で生まれ、
 関西で育ち、関西で創業しても良かったのではないかと思うほどだ。
 はなはだ僭越ながら、その視点で論を展開したい。

 ジョブズは1955年2月24日、サンフランシスコで生まれた。
 1955年と言えば、明石家さんまや掛布雅之と同じ年の生まれである。
 ちなみにボクも同じ年。

 そのジョブズは子供の頃、ヒューレット・パッカードでアルバイトをして
 いたことがある。きっかけは、なんと創業者の自宅に電話をかけて、
 電子部品をねだったことだという。もし関西で生まれていたら、
 アルバイト先は日本電産か村田製作所だったに違いない。

 大学は入ったその年に退学している。退学したのにキャンパスをうろついて、
 興味のある講義には出席していた。京都大学あたりでは日常的に
 見られそうな光景だ。

 コロンビア大学のロバート・サーマン教授は、ジョブズが仏教学者の
 鈴木大拙や京都学派に通じていて、素朴でシンプル、かつシャープな禅の
 審美眼を持ち、製品はまさにその投影だと分析していたという。

 ジョブズの功績は数限りないが、特筆すべきは、人をその気にさせる力だろう。

 ジョブスの最も有名な言葉は
 「Stay hungry, Stay foolish」(ハングリーであれ、愚か者であれ)だ。
 じつはこれは曹洞宗の祖、洞山良价禅師が説いた「愚の如く、魯ろの如く、
 よく相続するを主中の主と名づく」の意訳だった。
 曹洞宗といえば福井の永平寺だ。東京人から見たら福井も関西に見える。

 アップルを成長させるためペプシコからジョン・スカリーをスカウトした
 ときには「Do you want to sell sugar water for the rest of your life,
 or do you want to change the world ?」(砂糖水売って人生過ごしはるん
 かいな。そんなんより、世界変えへんか)と言い、ゼロックスから
 エンジニアを引き抜いたときには「I hear you're great, but everything
 you've done so far is crap. Come work for me」(優秀と聞いとったけど、
 たいしたことあらへんな。どや、ワシのために働かんか)と煽っている。

 けしかけて人をその気にさせるのはジョブズお得意のテクニックだが、
 もし彼が京都あたりの生まれなら、本音と建前をパーフェクトに使い分ける
 のは当然としても、もっと相手を気持よくさせる言葉を選んでいたに違いない。

 ジョブズが砂糖水発言でスカリーを引き抜いたのは、アップルに
 マーケティング担当者がいなくなってしまったからだ。それまでの担当である
 マイケル・スコットをアップルは解雇していた。その原因は、ジョブズと
 スコットの不仲と言われている。

 後にスコットは当時を振り返り、"ジョブズは思っていることを遠慮なく
 ストレートに口にした"と評している。もしジョブズが京都ばりのものの言い方を
 体得していたら、おそらくスコットは退任していなかっただろう。だとすると、
 アップルは今よりも成長していただろうか、はたまた、逆だっただろうか。

第3回

仏教と関西


 関西には寺が多い。

 平成24年版の宗教統計(文化庁編)によれば、
 全国には7万7333の仏教系寺院があり、そのうちの4212は大阪に、
 3704は兵庫に、3294は京都に、1979は奈良にある。

 思いの外、京都・奈良の数字が小さいが、数は知名度でカバーできる。
 京都に清水寺や延暦寺、金閣・銀閣に東西の本願寺があり、
 奈良には法隆寺、薬師寺、東大寺がある。
 関西は仏教を身近に感じられる地域なのだ。

 仏教は、人の一生は苦と定義している。なぜなら、人には前世があり、
 その前世での業や臨終の際の心のありようが、
 今の世を生きる人に「輪廻」すると考えられているからだ。
 その輪廻からの解放、すなわち苦からの脱出を「解脱」という。

 その仏教において、無知はすべての悪の根源とされている。
 知らないことは悪いことなのだ。

 では、無知でなくなるにはどうすればいいのか。
 現代人ならこの問いにこう答えるだろう。「ググれ」と。


 世界一有名な検索サイトを運営するグーグルは、
 1998年に、ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンによって設立された、
 などという説明はもはや不要だろう。高精度な検索エンジンにより
 無知でなくなることを手助けしてくれるグーグルの行動指針が
 「Don't be evil(邪悪になるな)」であるのは、実に仏教的である。

 グーグルはいまや
 エネルギーや医療、量子コンピューティングの分野にも手を広げていて、
 何の会社であるかを説明するのかが難しい状況になっているが、
 検索の印象はいまだ根強い。

 グーグルの検索は、インターネットという曼荼羅に点在している
 ニュースや過去をキーワードによって紐付けて、
 人の目の前に提示する。
 だから忘れられる権利に関する議論も巻き起こるわけだ。

 これまた実に仏教的で、どうしたって輪廻からの解脱に
 思いを馳せずにいられない。

 あるいはグーグルは、人は輪廻からは解脱できないことを、
 最新のテクノロジーを使って示す組織なのかもしれない。
 
 やはりシリコンバレーは関西である。

第4回

ローカルな舞台のスター


 昨今、YouTuberが世間を賑わしている。

 YouTubeでデビューし、YouTubeで人気を集めた、
 YouTubeのYouTubeによるYouTubeのためのスターのことだ。

 YouTubeをよく見ている人はその存在をよく知っているが、
 YouTubeを見ない人には何のことだかわからない存在でもある。
 彼ら彼女らは、YouTubeというローカルな地における人気者なのだ。

 グーグル傘下にあるYouTubeは、PayPal従業員だった
 スティーブ・チェン、チャド・ハーリー、ジョード・カリムによって
 2005年に設立された。

 パーティの時に撮影したビデオを共有するのに使った技術が
 発端になっているという。
 それが初音ミクのライブやsengoku38による画像流出の舞台へとつながった。

 さて、関西で舞台といえばやはり吉本新喜劇だろう。
 関西でお過ごしの方はご存じないかもしれないが、
 ボクのように東京で暮らしている人間にとっては
 「だれ?」と首をかしげたくなるような人が
 関西では超有名タレントであることが珍しくない。

 いい悪いではなく、現実にそうだと言いたいだけだ。
 インターネットを使わない人がYouTuberを知る術がないのと同様に、
 東京者は吉本新喜劇育ちのタレントを知り得ないのである。

 大阪には松竹新喜劇もある。
 吉本と松竹の違いは、劇風の雰囲気など多々あるが、
 最大の違いは演者の人間関係ではないか。

 松竹新喜劇は歌舞伎界出身の役者が創設したこともあって、
 徒弟制度を重視している。

 一方の吉本新喜劇は、グループに、
 ダウンタウンを輩出したことで知られるNSCこと吉本総合芸能学院を
 持つことからもわかるように競争制である。
 ページビューを稼ぎ再生回数を稼げる者こそがスターになる
 YouTuberの世界がそこに重なって見える。

 ところで、YouTube創設者のひとりであるスティーブ・チェンには、
 PayPalとYouTubeでの職歴の間に、フェイスブックで働いていたことがある。
 YouTube立ち上げのためフェイスブックを退社する彼に上司は、
 フェイスブックはその後急成長するであろうことを理由に
 「一生後悔するぞ」と言ったという。
 「今日はこれくらいにしたるわ」に並ぶ捨て台詞である。

 ただ、YouTubeもフェイスブックも大きくなったので、
 上司は池乃めだか師匠にならずにすんだ。

 ともあれシリコンバレーは関西である。

第5回

流れを制する者が世界を制する


 アマゾンが最新の物流センターをお披露目し、話題となった。

 その物流センターでは、1万5000台ものロボットが走り回り、
 ピッキング作業を行っているのである。
 ロボットは、アマゾンが2012年に7億7500万ドルで買収したキヴァ製である。

 アマゾンといえば昨年はPrime Air、
 いわゆるドローンを使っての配送の動画を公開している。
 新たな商流をつくりだした企業は、今やロボットに興味津々なのである。


 話は突然変わるが、若き工学者・田邉朔郎の指揮の下、
 琵琶湖の水を京都市内に引くための工事が始まったのは
 明治18(1885)年のことである。
 それは禁門の変の後に人口が減少した京都の再興に必須のものであったが、
 工事は困難を極めた。

 特に大変だったのは、第一トンネル建設のための竪穴工事と言われている。
 強固な岩盤に人力で挑んだため殉職者も数多く出すことになってしまった。
 現場はいわゆるブラックだったのだ。

 京都市営地下鉄東西線蹴上駅の近くにその霊を慰めるための慰霊碑が
 現存することは、先日、Ingressと祇園町のためだけに上洛したついでに
 目視チェックしたばかりである。


 ブラックといえば、アマゾンの物流センターについても
 その呼称がつきまとっていた。
 それを払拭するのが今回導入のロボットである。
 琵琶湖疎水の建設も明治の世でなければ、
 先進技術を使って効率的に進められたに違いない。

 琵琶湖疎水は、建設こそ人力頼みであったが、
 完成によって京都の街は飛躍的に近代化した。
 日本初の営業用水力発電所ができたことで、日本初の電気鉄道、
 建設当時世界最長の台車に船を載せて上下させるインクラインなどが
 実現したのだ。

 田邉朔郎は米国を視察した後に、当初の予定にはなかった
 水力発電所の建設を琵琶湖疎水計画に加えている。
 単に水の流れをつくり京都の街を物理的に潤すだけでなく、
 電気や物の流れによって金銭的にも潤すことを考えていたのだ。


 世界最大の川の名を冠したアマゾンの目標は、
 売上高や利益ではなく、キャッシュフローを最大化することだという。
 時代は異なっても、流れを制する者が世界を制する
 ということではないだろうか。


 実にシリコンバレーは関西である。

第6回

ベンチャーキャピタルの起源は
関西にある!


 ベンチャーには欠かせないものがいくつもある。

 その代表例が、企業のパトス、創業者のエートス、
 経営戦略というロゴスであるといいたいところだが、
 これらには先立つものが必要だ。

 つまり、資金である。

 もちろん資金だけでは起業はできないが、
 パトス・エートス・ロゴスだけでも起業できないのも事実。
 だからシリコンバレーは起業の街であり、
 ベンチャーキャピタリストの街でもある。


 ベンチャーキャピタルという言葉は日本語としても定着しつつあるが、
 それにしても、誰も訳語を作ろうとは思わなかったのだろうか。
 これでは日本語のカタカナ語化が進む一方であると
 小言を言いそうになって思い出した。

 ベンチャーキャピタルの起源は関西にあるのである。


 ベンチャーキャピタリストはすべての投資先から
 利益を得られるわけではない。
 「千三つ」の言葉の通り、1000の企業に投資し、
 うち3つの起業からリターンが得られれば万々歳だ。
 つまり、リターンが得られないことの方が多いわけで、
 ベンチャーキャピタリストは、
 そういったスリルが好きでないと続けられない職業だ。

 それを大阪で始めたとされる男がいる。
 その名を萩谷義則といい、本職は医師だ。
 明治の時代のこの医師は相撲が好きで、
 それが高じて、力士からは診療代を受け取らなかったそうだ。

 萩谷の経営する医院は現在の大阪市中央区谷町七丁目にあった。
 これがタニマチ、すなわち関西式ベンチャーキャピタリストの語源
 と言われている。最近でも、サントリーの佐治敬三氏は
 若乃花・貴乃花兄弟のタニマチとして知られていた。


 そのタニマチ文化つまりベンチャー文化を可視化したラインが
 大阪市営地下鉄谷町線であることはあまり知られていない。
 というのもボクがここで初めて唱えるからだ。

 谷町線は、関西ベンチャーの雄・パナソニックの本社に近い大日と、
 現在も創業者が社長を務めるミキハウスの本社に近い八尾南とを結んでいる。

 ベンチャーを始点としベンチャーを終点とする路線・大阪市営地下鉄谷町線。
 ここへは、本稿が世に出たとたん、
 シリコンバレーからの視察者が殺到することになるだろう。

第7回

3つの自治体にまたがる
文化学術研究都市


 関西の人は「関西」と十把一絡げにされるのを嫌うと聞いたことがある。

 欧米に「極東」と十把一絡げにされるときのことを思えば、
 それは大いに理解できる。
 しかし、便利なのでつい関西とまとめてしまう。

 関西の皆々様におかれても、"阪神"だの"京阪"など、
 文化的にどうなのよと思われるエリアをまとめておいでなのだから、
 あまり怒らないでほしい。
 最近は、けいはんなというのものまであるそうではないか。


 けいはんな、漢字で書けば京阪奈。
 近鉄にこの名を持つ路線もあるが、
 聞いて真っ先に思い出すのは関西文化学術研究都市だろう。

 1970年代から、理工系に限らない学術研究都市をつくる構想が
 進められた結果、1994年の都市びらきにこぎつけた。
 その名の通り、京都・大阪・奈良にまたがるこの学術都市には、
 京セラの中央研究所、大和ハウス工業の総合技術研究所、
 日本原子力研究開発機構の関西光科学研究所、国立国会図書館関西館、
 大学などがあり、堂々たるR&Dの街となっている。


 3つの自治体にまたがる文化学術研究都市
 ――これを時空のねじれを超えて真似たのがシリコンバレーであることは、
 もう、本稿をお読みの方には自明のことだろう。

 シリコンバレーもけいはんな同様、正式な自治体の名称ではなく、
 3つの都市、すなわち、マウンテンビュー、サニーベール、サンタクララを
 カバーするエリアを指す愛称である。
 マウンテンビューは比叡山や鞍馬山のある京都、
 サニーベールは太陽の塔を頂く大阪、
 サンタクララは島根県出雲市を介して姉妹都市としてなんとかつながる
 桜井市のある奈良から学んでいることは想像に難くない。

 3つの自治体にまたがっているからこそ、
 シリコンバレーもけいはんなも、自治体と程よい距離を保て、
 その存在感を維持できているのである。

 まったくもって、シリコンバレーは関西であり、けいはんなである。


 なお、神戸デジタル・ラボのある兵庫は京阪奈の外にあるが、
 この際、そのあたりは気にしないでいただきたい。

第8回

関西が予言していた
シリコンバレーの現在


 シリコンバレーでは今、ドローンがブームである。

 グーグルはその開発企業を買収し、アマゾンは宅配に使い、
 最近ではファッションショーにもドローンが登場したらしく、
 犬も歩けば棒に当たるか如く、
 鳥も羽ばたけばドローンに当たるといったこの頃である。

 関西がいち早く、
 このドローンブームの到来を予言していたのをご存じだろうか。

 それは1978年のことである。
 サザンオールスターズがデビューしたこの年、
 1人の大阪の青年が軽やかなメロディに乗せてこう歌ったのだ。

  『 とんでとんでとんでとんでとんでとんでとんでとんでとんで
    まわってまわってまわってまわる 』
           (円広志「夢想花」作詞作曲:円広志 より引用)

 シリコンバレーでは今、宇宙開発ブームである。
 イーロン・マスクはそれにのめり込んでいるように見えるし、
 もちろんグーグルも強い関心を示している。

 関西がいち早く、
 この宇宙開発ブームの到来を予言していたのをご存じだろうか。

 それはドローンブームの予言から2年ほど遅れた1980年のことだった。
 ある青年が華やかなメロディに乗せてこう歌っている。

  『 空を飛ぶ 街が飛ぶ 雲を突き抜け 星になる
    火を吹いて 闇を裂き スーパー・シティが舞いあがる 』
    (沢田研二「TOKIO」作詞:糸井重里 作曲:加瀬邦彦 より引用)

 トーキーオッ。それ東京やんというツッコミは不要。
 パラシュートを背負って熱唱していたのは京都育ちの青年なのだから。

 1978年、1980年の歌謡曲が今のシリコンバレーを予言していることから、
 次は1982年だと当たりを付けるのは大人なら当然のことである。
 そしてその1982年には「悲しい色やね」がリリースされている。

 ここにどのような予言を見出すかは読者諸氏次第であるが、
 ボクは『 そんなことさえ わからんようになったのか 』が
 キーだと思っている。
   (上田正樹「悲しい色やね」作詞:康珍化 作曲:林哲司より引用)

 これはずばり、人工知能の暗喩である。

 事実、人工知能はシリコンバレーでブームになりつつある。

第9回

シリコンバレーの
建設ラッシュは何なのか?


 シリコンバレーは建設ラッシュの真っ直中にある。

 クパチーノではアップルが、
 宇宙船のような辺り一帯を掃除する巨大ルンバのような
 欧州合同原子核研究機構の大型ハドロン衝突型加速器のような、
 ドーナツ型の巨大社屋を建造中だ。

 収容人数は3400人。
 その様子は定期的にドローンを用いて撮影され、
 公開されているのでご覧になった方もいるだろう。


 フェイスブックは2011年に、メンローパークにある、
 元サン・マイクロシステムズが所有していた土地に本社を移転し、
 新たなビルも造っている。


 設計はスペインのビルバオ・グッゲンハイム美術館を設計した建築家、
 フランク・ゲイリーによるもので、屋上がちょっとした、
 いや、大規模な庭園となっている。


 グーグルも負けてはいない。
 今年発表された、新たに建設予定の新社屋のデザインは、さながら温室。
 空調が大変なのではないかと他人事ながら心配になる構造だ。
 完成すると、現在は80箇所ほどに分散している約1万5000人の従業員が、
 この本社に集うことになる。


 まったく、ベンチャーは成長した途端に大きな建物を造りたがる
 ――と嘆息するのはお門違いだ。
 名をなした彼らが立派な建物を造りたがるのには理由がある。


 京都には高い建物が2つある。
 実際には京都タワーもあるが、
 京都の高い建物といえば誰が何と言おうとこの2つ、
 京セラ本社(高さ95メートル、1998年竣工)、
 日本電産本社(高さ100メートル、2003年竣工)だ。

 あとからできた方が5メートル高い理由はおそらく想像の通りであろう。
 何事も切磋琢磨しなくては気が済まないこのベンチャー精神が、
 街を盛り上げている。

 京セラの創業は1959年、日本電産の設立は1973年である。
 では、東京でこの頃に誕生した企業が、高い、
 あるいは広い自社ビルを持っているかというと、
 もう少し古い電機メーカーかだいぶ古い財閥系企業ばかりだ。


 何が言いたいかというと、京都の起業は創業から築城までが早いということだ。
 シリコンバレーの建設ラッシュも
 この京都へのリスペクトであることは言うまでもない。

 まったくもって、シリコンバレーは関西なのだ。

第10回

イノベーションを生む文化


 このコラムも最終回である。

 牽強付会にシリコンバレーは関西だと書き連ねてきたが、
 ここでその根拠を開陳したいと思う。


 2012年の中小企業庁のデータによると、
 日本における小規模事業者は334万者で、割合にして86.5%。
 この数字は1986年以降、減少傾向にある。

 非常に乱暴な言い方をすれば、日本は大企業化をしているということだ。
 これはつまり、日本の東京化といえる。

 帝国データバンクの調査によると、
 大企業の数は人口約1300万人の東京に5000以上、
 人口約890万人の大阪に約1400であるから、
 どれだけ東京に大企業が偏在しているかは改めて説明するまでもない。


 だから、シリコンバレーは関西なのだ。
 シリコンバレーは、そこで誕生した企業が大企業になっても、
 大企業だけの街にはならない。

 巨木の陰でひっそりと芽を出し成長していく企業を育み続け、
 巨木が朽ちることがあればそれは新しい萌芽のための養分となる。

 そうやってシリコンバレーは永遠にシリコンバレーであり続けて、
 ニューヨークにはならない。
 シリコンバレーはニューヨークというエコノミックシティに対する、
 自由で陽気なカウンターパートなのだ。


 ニューヨークを東京になぞらえれば、
 シリコンバレーは関西にほかならない。

 日本のニューヨークに暮らしているボクには
 それが実感を伴ってよくわかる。

 京都大学の卒業式や阪神甲子園球場のバックネット裏や
 関西電気保安協会のCMに見られる
 ほどよい力の抜け方は遊び心そのものであり、
 それを受け入れる土壌がイノベーションを生むのだと思う。


 なぜその雰囲気が関西にはあって、東京にはないのか。
 それは文化の違いとしか言いようがない。

 関西にお住まいで関西で働く方々はその文化をぜひ、
 大切にしてもらいたい。ボクが関西に向ける目は、
 みなさんがシリコンバレーに対して向けるそれと、
 全く同じものなのである。

 だから大きな声で言う。シリコンバレーは関西だ!

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