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スペシャル対談 ~ネットサービスサイエンス

NSSスペシャル対談 諏訪 良武×永吉 一郎

KDL独自の「ネットサービスサイエンス(NSS)」を提唱。

リアル店舗やコールセンターのサービス改善で話題のサービスサイエンス。KDLでは、この考え方をネットビジネスにも当てはめた独自の理論「ネットサービスサイエンス(NSS)」を提唱しており、自社サービスにも取り入れています。今回、日本を代表するサービスサイエンスの実践者でもあるワクコンサルティングの諏訪良武さんとKDL代表取締役の永吉一郎が、IT業界におけるサービスサイエンスのあり方について対談を行いました。

サービスサイエンスとは?

サービスを科学的に分類・分解・モデル化することで、顧客の視点でサービスを見直し、顧客満足を高めることができる考え方です。
起源は、米国IBMがサービス業の生産性向上とイノベーションの促進を目的に提唱したもので、日本においては、諏訪良武さんなどの具体的な実践の中で進化を遂げています。
  • *サービスを要素で分解

    どんなサービスも「要素」に分解して考えることで、顧客満足を生み出す理由を知ることができます。左図はネット通販サービスの例です。
  • *顧客の事前期待を超える

    サービスを考える上で、「事前期待」と言われる、お客様の事前の期待を正しく把握するこがが重要です。この事前期待を超えてはじめて顧客満足が実現できるからです。

ネットサービスサイエンス対談

上記はサービスサイエンスのエッセンスの一部ですが、実際にこの理論をオムロンフィールドエンジニアリング時代に実践され、顧客視点から全社的な業務改革に取り組まれた結果、たった3年間で「地味で目立たない修理会社」から「高い顧客満足度と生産性を誇る会社」へと生まれ変わらせることに成功された諏訪良武さんと、KDL代表の永吉でこれからのサービスサイエンスのあり方について対談をさせていただきました。

諏訪 良武

株式会社 ワクコンサルティング
エグゼクティブコンサルタント
1947年生まれ。京都工芸繊維大学大学院修了後、1971年オムロン(株)(当時立石電機)に入社。1997年オムロンフィールドエンジニアリング(株)の常務取締役に就任。現在は、ワクコンサルティング(株)の常務執行役員として、カタチとして見えないサービスや顧客満足を科学的に分析し、競争力アップに必要な方法論を提唱している。著書に『顧客はサービスを買っている』、『たった2つの質問だけ!いちばんシンプルな問題解決の方法』(以上、ダイヤモンド社)などがある。

オムロンでの原体験

司会
諏訪さんのコンサルティング先企業ではサービスサイエンスによる企業改革が着実に成果を生んでいるとお聞きしています。
サービスサイエンスがどうやって生まれたのか非常に興味があるのですが、オムロン時代のご経験からお話しいただけますか?
諏訪
僕はどちらかというと設計に近いところにいました。
よその会社でいうと技術管理部に近いところですね。
設計の標準化・システム化、開発環境作りに関わることが多く、20代後半~30代前半に、オムロンの開発効率化の大プロジェクトを担当していました。
中でも、20代の最後に行った部品コードのグローバル統一が大きく、それまでは、工場ごとに部品番号が別々でしたが、結果的に世界中の部品番号を共通化しました。
永吉
私も京セラで設計業務には関わってきたのですが、
部品コードのグローバル統一はトヨタが最初だと思っていました。しかも、つい4~5年前の話だと。
諏訪
実はオムロンは30年前になしとげているのです。当時比較的早かったのはソニーかな?
オムロンへのCAD導入も私が中心になって取り組みました。
司会
サービスサイエンスでは、サービスを設計していく重要性を唱えられていますが、
原体験とでも言えるものがありそうですね?
諏訪
オムロンに入社して3日目に同期7人でミーティングをしていたら、先輩係長がやって来て「この中でプログラムが出来る人」と訊かれたので、手を挙げると、「君悪いけど、この電卓のスペアパーツの管理表をコンピュータで整理してくれ。」と言われ、すぐに大阪のデータセンターに行くことになりました。
FORTLANしか触ったことがないのに、PL1を使う必要があり、ランゲージマニュアルを片手に必死で勉強しました。
すると、その直後に、ある大手商社さん経由のアメリカ向けビジネスで、スペアパーツの大トラブルが発生し、何が何でも再発防止策を打てとの大号令が出ました。その際の目玉の策が、コンピュータでスペアパーツを管理することだったんです(笑)それが昭和49年頃の話。
永吉
昭和40年代や50年代の前半なら、台帳管理が普通だったんでしょうけどね(笑)
諏訪
コンピュータでスペアパーツを管理するために、3日くらい徹夜して、それでもギリギリの納期となりました。
直接京都の長岡天神から梅田まで電車で運んだのですが、電車で座ると寝てしまうので、立ちながら足をカクカクさせてその商社さんまで届けに行きました。
すると、お客様に「新人がこんな仕事をするなんて!」とすごく褒められました。
それが僕の仕事の原体験。お客様にすごく喜んでもらえたのが嬉しかった。
そこから部品とのお付き合いが始まりました。
バッチ処理でしたが部品を完璧に管理できるプログラムを一人で作りあげました。
実際作り上げてみると運用がまた大変で、部品の番号を都度登録する必要があり、
それも全部一人でやらないといけませんでした。
そんな私に対して、アメリカの人からは「Mr.パーツリスト」と呼ばれるようになりました(笑)
その仕事の傍らで図面管理の標準化の仕事もやらねばならなくなりました。
図面室という80人中95%が女性というものすごい部署でした。
それまで、部品表は手書きなので、設計変更はものすごく大変でしたが、コンピュータだと簡単にできるので、コンピュータで使っている部品表を生産にも使うように提案をして、少しずつ置き換えていきました。
最初は「何をとぼけたことを言っているのだ」という目で見られていましたが、バッチ処理ながらも、生産で使う部品明細表に徐々に置き換わって行きました。
その後、30歳代前半には、設計の大プロジェクトにリーダーとして入ることになりました。
永吉
僕がちょうど入った時はCADになる時でしたが、その頃CADは革命でした。
何が革命かというと、部品の共通化ができたから。
それまでは、部品表が頭に入っている設計者でないとうまくできなかったのですが、
部品の共通化によって、格段に設計が速くなったのです。
司会
諏訪さんはオムロン時代に「標準化」することを身につけられたと言ってよいかもしれませんね。
諏訪
サービスにつながるという意味では、「標準化」というキーワードよりは、「業務プロセスをしっかり定義してどうあるべきだ」ということを決めて行くトレーニングをその頃にさんざんやったと言った方が良いかもしれない。一から自分でやるしかないことばかりだったけどね。
設計の改革では、それまでは、設計者個人の力量で設計されていて、図面の大きさだとか図面枠に何を書かなきゃいけないかというのは決まっていたけれど、設計の仕方なんて決まっていなかったんです。それを全部決めていくということをやりました。
永吉
設計のやり方を決めるって、具体的にどうするのですか?
諏訪
設計のプロセスを定義してやるべきことを明確にして行くのです。
どのタイミングではどういう図面を書いて、デザインレビューはこの辺で入れて...というようなことを全部決めて行くわけです。しかも、全社の製品を同じ体系の中で標準化したのだからすごいインパクトでしたよ。普通なら、公共系、金融系、まして部品レベルの製品とでは、設計方法はもちろん、部品の番号体系も違って当然のところを全部やったので。
永吉
その当時だと相当先進的ですよ!
諏訪
その頃のオムロンは一気に先進的になったんです(笑)
永吉
それは自社にあるパーツが全て分かるということですね?
諏訪
例えば、ATMの中でリレーを使っていたら、リレーが設計で困った時にどうあるべきか、全社レベルでノウハウがチェーンのようにつながっている。
永吉
そうか、それって、サービスにおいても重要ですね!
諏訪
そうそう。その頃にね、設計の業務を標準化して全社業務を変えていくかをやってきたその経験がサービスサイエンスに結構効いているわけ。
要は、設計という行為をある種抽象化してモデル化した訳でしょ?
だから、抽象化してモデル化したからコンピュータに乗せられるようになったわけですよ。
それはサービスでも一緒。サービスを抽象化してモデル化して、それを人に説明できるようにしようとすると、サービスサイエンスになる。
若いころにそういうのをOJTでトレーニングされたことが、今結構効いていると言えますね。

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OFEで行ったサービスの改革

司会
オムロンからオムロンフィールドエンジニアリング(OFE)に移られてからのお話をお聞かせ下さい。
諏訪
OFEは、オムロン時代からアウトソーシング先として使っていたけれど、使う側から見ていて、課題は多いなと思っていました。
開発や生産部門の大改革は何回もやっていたから分かっていましたが、サービス会社の改革は大変だと思いました。
設備やシステムを入れて変わるものではなく、何より、人を変えないといけないからです。そこを忠実にやるしかないと思いました。
永吉
それをやり遂げたのですから、まさにサービス業界変革の先駆者ですね!
諏訪
当時は全てに明確なセオリーがあったわけではなく、
直感を信じて実行ということもありましたけど(笑)
永吉
現場の体制を維持しながら、サービス会社全体を改革するのは結構大変ではなかったですか?
諏訪
動いている保守の現場を変えるのだから、どれも大変でした。
保守サービスは大きく分けて『判断業務』と『現場作業』に分かれますが、『判断業務』に突出するスタッフはどうしても限定されます。現場のチームレベルでみると
5〜6名のスタッフに1名の『判断業務』ができるリーダーで動いているのが実情だった。
それをリーダーの中から『判断業務』が特に優れたリーダーをコールセンター側に集めて、指示するセンターと指示通りに素早く、正確に動く現場というふうに機能分離をしました。
とてもリスキーなので反対意見も多かったのですが、全体のサービスレベルは格段に向上しました。
永吉
OFEに移られて、お客様と意識のギャップはどうやって埋めていったのですか?
諏訪
お客様へのヒアリング調査をまず徹底的にしました。
特にオムロン以外の、金融や公共系といった外部の声、つまりお客様の期待を拾っていきました。
当時のマーケットがOFEに求めていたものは、『修理会社』から『保守サービス会社』への変革でした。保守スタッフの修理スキルについ注力してしまいがちですが、「スピード」と「進捗管理」を重視してお客様に情報を提供することが最重要だということが分かったのです。
中でも、オンサイト保守をお客様に見える化したことが非常に好評でした。地図情報を活用して、カスタマーエンジニアが出動している場所とステータスをリアルタイムで確認ができるもので、これは新しいサービス商品とも言えると思います。コールセンターを見学されるお客様が増え、受注のきっかけとなり、OFEの勝ちパターンとも言えるものになりました。
永吉
諏訪さんの在籍された間のOFEの変化は大きかったでしょうね。
諏訪
「サービスの見える化」でOS協会様より、IT総合賞の受賞をはじめ、当時は表彰ラッシュでした。
7年の努力の甲斐があって、売上が大きく伸びたことはもちろん、顧客構成が大きく変わりました。
親会社からのオムロン事業が大半であったところが、自主事業が半分くらいにまで広げることができたのです。ブランド力向上を社員全員で知恵を絞って作り上げた感じです。

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サービスサイエンスで様々な会社を改革

司会
OFEを改革した後に、コンサルタントとして多くの企業改革にも乗り出されていますが、これまでと同じやり方でいけると思われましたか?
諏訪
多くの企業がやっているサービスは、直感と伝承と気合でやっているので上手くいかないのは当然だと思っていました。メーカーが製品企画をして世に送り出すまでに、いくつものプロセスを定義して、設計からはじまりデザインレビューをこのタイミングで実施して...と全社レベルで意識して行うのと比べると、サービスはほとんどできていないと言えます。逆に言うと少しやると効果は出やすいのです。自分自身は、若い頃から事実上「社内コンサル」として、嫌というほどクリティカルなことをやってきたのである程度できる確信はありましたね。
司会
コンサルを依頼されるきっかけはどんなことが多いのですか?
呼ばれて困ったところはなかったのですか?
諏訪
紹介も多いですが、講演に参加いただくとか、著書を見て連絡をいただくことがほとんどです。依頼されて困ることはなかったですが、ウェディング業界のトップ自ら依頼をもらった時はビックリしました。ところが、ウェディング業界のコンサルが今やっていて一番楽しいです。経営側の意識が高いことに加えて、参加メンバーの皆さんがすごく真面目に取り組んでくれるからです。サービスサイエンスがすごく生きそうだと思っています。
司会
サービスサイエンスが定着しやすい企業などありますか?
諏訪
やはり、経営とかミドルマネジメントが危機感を持っていて、何とかしなくては思っている会社は成果が出ますね。ところが、サラリーマン化していて、上からの指示で断るわけにはいかないからで始まったプロジェクトは効果は出るが限界はあると思います。
永吉
業種業態ではないということですね?
諏訪
サービスを企業にとって生かせるかどうかは、企業としての危機感や行動力みたいなところではないかと実感しますね。

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ネット業界ではIT暗黙知の把握が重要

司会
ネットの世界も流れが変わってきていますね。
ただ、実店舗でやってきた商品販売をネットに置き換えることには意味がなくなってきています。
永吉
話は少し外れるかもしれませんが、去年、通販業界のランキングがガラッと変わりました。
去年の一位はどこか分かりますか? ジャパネットなんですよ。傾向値から言うと、小売市場全体は皆下がっていますが、通販業界全体は5%上がり、いわゆるカタログ販売(ベルメゾン、千趣会)は10%下がり、ネットとテレビ通販が15%上がったんです。これは構造的な変化だと思います。
諏訪
あとは、エコポイントをうまく使えている会社と使えてない会社というのもあるのでは?ジャパネットはこれ上手く使えている会社とも言えますね。
永吉
確かにそうですね。なお、今年は全ての通販会社が、年頭にネットに力を入れると言っています。
アメリカでは、一年で一番モノが売れるクリスマス一週間前のセールで、ネット販売が全米でありえないくらい上がりました。例年はデパートで人気商品は品切れを起こすところが、その動きが見られなかったのです。これは、デパートでモノを見て、自宅でネット注文していたためです。昨年これが加速し、ネットにシフトしたのは、送料無料にしたからだと思います。これで、購買行動が完全に変わりました。ついにそういう時代に入ったなと思いました。
みんなが狙い始めると、競争優位を担保するための仕組みがシステムになると思います。そうなるとまた競争になるでしょう。これはシステムコストの話ではなく、サービスサイエンスの話。店頭では、古くは番頭さんのように優れた人物がいて売るためのノウハウを持っていました。
ところが、ネットでは世界が違うためにこういった人物のノウハウが生かせなくなっていると思います。
諏訪
そういう意味では、ある金型の会社の社長が「金型のノウハウは全て形式知化できたが、ITノウハウは深すぎる上に変化が多すぎて手に負えない。今ビジネスやっていて一番欲しいノウハウはITノウハウだ。」と言っています。
永吉
「ITノウハウ」というのは、何を指しているのでしょう?
諏訪
例えば、新しい技術シーズが出てきますが、それに飛び乗っていいのかどうか、分からない。「クラウド」や「ツイッター」なんてその典型です。インターネットをはじめとしたIT技術がどういった順番で展開しそうというのは分かりますが、それがどういう価値があって、まして自社の経営にどんなふうに使えるのかまでは分からないのです。
製造業では、熱膨張をカバーするためにコンマ以下何ミリのどうというポイントがあって、それをちゃんとやれる会社はいい製品ができます。それのIT版がやれる企業の価値は大きいのではないでしょうか。ITで、いつ、どのようにビジネスに使ったら、どんな凄いことが起こるのか、みんな分らないからです。流れができて気がついたのでは遅くて、とても他社に先行してメリット獲得などできません。
IT暗黙知をしっかりと掴むのは非常に重要です。ITのビジネスモデルをしっかりと整理してそれを自分たちのノウハウとして使えるようになれば強いと思います。特定のウェブサービスが日本ではなぜか上手くいかないことがよくあるのですが、文化論やキメの細かい話にまで理解が及べば、日本でもうまく使えるというのがあるはずです。これを経営者目線で満足できるように発信できれば強いだろうと思います。
永吉
サービス提供者にとって都合のよい本は出ていますが、利用者の本質的な心理や課題にまで掘り下げた、経営に活用できるレベルで標準化されたノウハウ本はないですからね。

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サービスとITが両方分かることが一番強い

諏訪
ITでビジネスのお手伝いをするというモデルはもう伸びないと思います。
永吉
もうもたない。当然なんですよね。それを安く提供できる国に囲まれていますからね。
諏訪
まず、インドには勝てない。大手では年間1万人2万人ってレベルで採用します。その中から100人を金融、200人は中国にとりあえず放り込もうということが平気にできる国には太刀打ちできない。平均レベルも高いけど、100名の中から他社を圧巻するような超スペシャリストが生まれる可能性があるからです。あるジャンルに3人付けて頑張ろうというところが勝てるわけがありません。
永吉
これからは、サービスへどれだけ踏み込めるかだと思います。
諏訪
これからのソフトウェアハウスの生きる道は、サービスに本気で関わる、できれば自分がサービス提供者となるところまで踏み込むべきだと思います。自らアプリケーションを作る能力があるのだから、その能力のあるサービス会社になることです。その能力のないサービス会社とは違うのだから間違いなく差別化になります。ものづくり、つまりアプリケーションを作ることからの利益に頼らず、アプリケーションを良くしてサービスで儲けることができれば本当は一番強い。ビジネスモデルとITがフル活用できるからです。
永吉
楽天やヤフー、かつてのライブドアなんてこの典型かもしれませんね。
諏訪
サービスサイエンスは奥が深く、非常にとんがった分析や活用を目指す方も多いのですが、私は基本的な理解をした上で、早く具体的にビジネスや現場でサービスサイエンスを生かすことの方がはるかに非常に重要だと考えています。オムロン時代からサービス価値を生むための改善にITの力が必要なことは痛感してきました。KDLが企業のIT、とりわけ、ネットにサービスサイエンスの視点を活用する意義はとても大きいと思います。ウェブサイトであれば、利用者の視点に立って、期待されるサービスを作り込んでいけます。そこにITのノウハウがが生かされているのだから。この取り組みはサービスサイエンスの一つの展開として期待していますし、是非協力して有意義な活動にしていきたいなと思っています。
司会
本日はありがとうございました。

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