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SAP HANAユーザーグループで事例講演に登壇

KDLは、川崎重工業様のグループ全体のIT基盤を扱う部署において、分析技術のひとつとして、KDLが京都大学と共同開発しているデータ活用技術「関係性技術」を導入いただいています。
この度、SAP社のインメモリーデータプラットフォームHANAのユーザーグループ(HUG)において、川崎重工業様でSAP HANAを用いた取り組みを主導されている同社デジタルイノベーション部 三島様が、SAP HANA+先端技術活用事例として講演されるにあたり、その中で関係性技術が担う役割とSAP HANAを用いた今後の展望について、KDL山口耕平からご紹介しました。

関係性技術導入の経緯

川崎重工業様のアフターサービス高度化に向けた取り組みの中で、障害などの問い合わせや定期保守の調査内容、対応など、サービス担当者や営業担当者が書き込むサービス履歴(テキストデータ)の分析技術として、関係性技術を導入いただいています。

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川崎重工業様の分析技術によるアフターサービス高度化の取り組み

蓄積された過去のサービス履歴データを分析し、障害などの問題事象が発生した際にアフターサービス管理者や担当者に分析結果を提供することで、解決までの時間を短縮や今後の障害の事前対応を実現し、カスタマーロイヤリティ向上につなげる取り組みです。また、ベテラン要員のノウハウ継承や、様々な分析結果を設計開発・製造にフィードバックすることで、製品自体の高度化を図り、障害件数自体の削減にもつながると考えられます。

この取り組みを始められる際、一般的な分析エンジンではかなりのデータ量が必要である一方、川崎重工業様グループが推進する水素チェーンや医療ロボットなどの新事業では、分析対象のデータ自体が少ないため、期待する結果が得られるまでに相応の年月がかかるのではという懸念をお持ちでした。その中で「関係性技術」による分析を試用いただき、過去のわずか1000件程度のサンプルデータからも適切に関係性を可視化できることが実証できたことから、アイデア次第で様々な用途に適用できる可能性があると感じていただき、導入に至りました。

関係性技術導入時のインタビュー記事はこちら
https://www.kdl.co.jp/blog/2017/11/case-khi.html

エコシステムプラットフォーム構築に向けて

現在、川崎重工業様ではオープンイノベーションへの寄与を目指して、これまでに開発してきた各種IT基盤を統合し、川崎重工業様の製品に関わる全てのステークホルダが利用できるような、エコシステムプラットフォームの開発を進めておられます。
その取り組みにおいて、KDLは独自実装してきた関係性技術を使うための「関係性エンジン」を、SAP HANA上で動作するよう最適化し、エコシステムプラットフォームにおける運用コストの削減と分析処理の高速化を行っています。

運用コストの削減

「関係性エンジン」は、動作環境にEC2等のクラウドサーバーを必要としており、これまでは、SAP HANA上に蓄積されたサービス履歴データを「関係性エンジン」専用の環境に連携して分析する必要があったため、複数のインフラの管理が必要でした。そこで、「関係性エンジン」をSAP HANA向けに最適化しインフラを統一することで、運用コストの削減を目指しています。

分析処理の高速化

これまで、関係性技術の分析に必要なネットワークグラフの処理機能を独自で実装していましたが、処理の高速化には限界がありました。この問題を、SAP HANAが持つグラフ処理機能を用いることで、HANAのインメモリーでのデータ処理の特徴を最大限に活かし、高速化に取り組んでいます。

分析プラットフォーム統一のイメージ

SAP社によれば、SAP HANAを、高速データベースとしてだけでなく、グラフ分析エンジンとしても活用する今回の事例は、日本国内でも先進的な取り組みであるとのことです。今回の講演終了後には、HUGに参加された他企業様からも「参考になった」とのコメントを多数いただきました。

なお、今回のエコシステムプラットフォーム構築に向けた最適化は2019年度中に完了し、2020年度には川崎重工業様とともに実利用に向けた取り組みを進めていく計画となっています。

本取り組みは、SAP HANA情報集約サイトでも導入事例としてご紹介いだいております。
https://www.sapjp.com/blog/sap_hana_lp/

会場紹介

今回登壇させていただいた第6回HUGは、富士通デジタル・トランスフォーメーション・センター(大阪)にて開催されました。

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同センターは、富士通株式会社が提供される共創ワークショップ空間です。HUGの冒頭に実施された会場ツアーでは、デザイン・アプローチを用いてディスカッションやグループワークをサポートするStudioA、独自開発のインタラクティブボードで他にはないICTを活用したワークショップの実施が可能なStudioB、サイバー攻撃の脅威をリアルに体感できるStudioCなど、その柔軟な発想を創り出せる新しい環境をご紹介いただきました。