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宇宙を学ぶ小中学生向け合宿開催 21世紀に必要な人材を育てる

2023年3月某日、超小型無人月面探査車「YAOKI(やおき)」を中心に、宇宙について学ぶ小中学生向けの合宿「YAOKIと一緒に月面探査を体験しよう」を開催しました。2021年・2022年の夏期開催に続く、第3期生を募集したものです。

合宿では、3日間のプログラムを通して、YAOKI・ロケット・宇宙について体験しながら学びを深めます。

今回は、バージョンアップした実施内容のご紹介と、KDLがこの取り組みにより目指す未来についてご紹介します。

開催概要

イベント名この春はYAOKIと一緒に​月面探査を体験しよう in 淡路島
日程2023年3月29日(水)〜31日(金) ※2泊3日
場所国立淡路青少年交流の家
対象小学校高学年(新小学4年生~新中学1年生)
定員16名

プログラムの内容

ペットボトルロケット

今回のプログラムでは、これまでのプログラムに加えて、ペットボトルロケットの製作と発射実験をしました。固くて湾曲したペットボトルの加工はなかなか大変です。はさみやカッターで切って加工し、ビニールテープを使って部品を貼り付け、ロケットを作り上げました。

大人はあまり作り方の指導をせず、子どもたち自らが説明書を見ながら、試行錯誤して制作してもらいました。思ったように進めることができず諦めかける参加者もいましたが、周りの子が自然と声をかけて教え合い、作り上げる姿も見られました。

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実はイベント企画段階では、「小中学生で上手に作れるか?」という懸念もあったのですが、まったくの杞憂におわり、みな思い思いのデザインでロケットが出来上がりました。

私たちは、子どもたちに伝えることは答えそのものではなく、自ら考えて作る姿勢や結論を導くための考え方であるべきだと考えています。今回は、ペットボトル製作を通じて手を動かしながら考えてもらうことを重視しました。完成した個性あふれるロケットには、大人のほうが驚かされるばかりでした。

発射実験は、日本旅行様の探求体験プログラム「ミライ塾」にご協力いただき、交流の家に隣接する砂浜で行いました。子どもたちが一生懸命に作ったロケットに、燃料となる水を入れ、専用の発射台にセットして、5・4・3・2・1とカウントダウン、、、発射!

ものすごい勢いでロケットが空気を切って飛んでいきます。150m近く飛んだロケットも多数ありました。こんなに飛ぶとは。大人もビックリでした。

水の量や圧力のかけ方、羽根の付け方で、飛び方や飛距離はかなり変わるそうです。今回はいろいろ試すほどの時間がありませんでしたが、仕組みを学びながら飛ぶ方法を実験するのも楽しそうですね。

子どもたちにとって、自分で考えて工夫しながら作ったロケットがちゃんと飛んだ!という体験はとても貴重だったようです。合宿の帰路では、着替えなどが入った体より大きなカバンを背負いながら、両手に大事そうにロケットを持って帰る様子が印象的でした。後日、保護者の方から伺ったお話では、自宅に帰ってからも発射実験をした子もいたようです。工夫して作ったロケットが飛んだ体験が自信に繋がり、やってみようという行動につながっていれば嬉しいです。

チームでの協働作業

この合宿は3日間を通して、チームで行動をしてもらいます。ペットボトルロケット制作をチームで協力し、後述するYAOKIを使った月面探査ミッションの作戦会議・ミッション実行・振り返りもチームで話し合いながら進めます。この合宿で集まった16人は、そのほとんどが初対面でした。

最初こそよそよそしかった参加者の子どもたちですが、あっという間に打ち解け合い、いつのまにか「◯◯くんは、こっちがやりたいやろ。だからわたしはそっちをやるわ」と阿吽の呼吸が生まれる関係性が出来上がっていました。
同じ目標を持ち、力を合わせて成し遂げるために、相手を想いやり適応していく姿に驚き、感心させられました。

月面探査ミッション

さて、メインイベント。YAOKIを使った疑似月面探査ミッションです。YAOKIが実際に月面探査で計画している水と洞窟の探査を、YAOKIを遠隔操縦しながら擬似的に体験できるプログラムです。

このミッションは、ただ操縦するだけではなく、合宿の3日間を通して知識を深め、考えながら進めていきます。

初日。まずはYAOKIのことを理解する時間です。YAOKIに触れ、座学でYAOKIのこと、月面の探査や開発のことを学びます。YAOKI開発者であるダイモン社の中島さんのビデオメッセージや、同じくYAOKI開発者の根本さんとのオンライン質問会もあり、図鑑を読むだけでは分からない宇宙のことを少しずつ身近に感じてもらいます。

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2日目は本格的なミッションに入ります。最初にミッションの内容(遠隔操作で水と洞窟と未確認生物を探す)を説明し、その説明を受けて、チームそれぞれで「作戦」を立ててもらいます。これは、課題を誰かに与えられるのではなく、何が課題か、または課題になりうるか、を考えてもらうための時間です。

誰が何を担当するか、どんなことに困りそうか、そうなった場合にどうするか。

「そんなん分からんわー」と言いながらも、必死に想像し、チームの仲間が「こうしたらええんちゃう」とアイデアを出し合います。子どもたちなりに思考とコミュニケーションが刺激しあって、多くの計画案が出てきました。

そして、いよいよ月面探査ミッション実行。

暗い月面に降り立ったYAOKIのカメラの映像。最初は状況が分からず苦労します。チームの中で交代で1人だけが操縦し、他のメンバーは操縦している子に声を掛けたり、メモを取ったりします。操縦していない子たちからは「あー、こっちこっち」「ちゃうちゃう、そっちやって」「うわっ、なんかあったぞ、いま」ともう大騒ぎ。

実際には計画通りにはならず苦労しただけでタイムアップとなってしまいました。終わった直後は「ぜんぜん分からんくておもんなかったわ」と文句のオンパレードでしたが、最終日に何が一番面白かったかを聞いたところ、このミッション実行だったそうです。もう一度やりたいと。どっちやねん(笑)。

課題を考えることの難しさ、実際に行動してみるチャレンジ精神、行動したから得ることができる視点や、次はこうしたい!という達成欲を感じ取ってくれたのではないかと思います。

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振り返りとアウトプット

そして最終日。プログラムの全体をしっかりと振り返ります。

良かったことは何か?何に苦労したか?どうすれば良かったのか?子どもたちは日々多くのことに触れますが、大人と同じようにその経験をひとつずつ心に刻むことで成長していくのだと思います。きっとその伸びしろは、大人の比ではないはずです。体験を通じて、参加した皆さまにとっての自信や何かにぶつかったときの考え方のひとつになればと考え、この時間を設けています。

また、ここまでの体験で得たものをアウトプットしてもらうために、YAOKIへの機能追加のアイデアを出してもらいます。16人の参加者から178個ものアイデアが出てきました。大人も唸る、奇想天外なアイデアが続出。答えを求めて学習することには慣れている子どもたちかと思いますが、自由な妄想をしてもらう楽しさや難しさを感じてもらえていれば嬉しいです。yaoki2023spring-6-spring.JPG

子どもたちに伝えたいこと

今回で3回目の合宿ですが、毎回参加者の反応やアンケートを通じて、少しずつ内容をアップデートしながら取り組んでいます。その一方で、初回から一貫していることがあります。

  • 大人は答えを教えないこと。誘導しないこと。自ら考えることを促すに徹すること。
  • 考えたら行動していただくこと。制限事項は最小限に留めること。
  • コミュニケーションしていただくこと。自由な発想を止めないこと。

これは、2002年に創設されたアメリカの非営利団体(NPO)「Partnership for 21st Century Skills(P21)」が提唱した、「the 4 C’s of 21st Century Skills」を参考にしています。P21には、ビジネス界(アップルコンピュータ、マイクロソフト社、デルコンピュータなど)、教育界(National Education Association: NEA、米国教育省など)、政界の重要人物たちが多数参加しています。

「the 4 C’s of 21st Century Skills」は、デジタル時代の21世紀を生きる子どもたちに教えることとして4つの柱が設定されています。

  • Creativity (創造力)
  • Communication(会話力)
  • Collaboration(協働性)
  • Critical Thinking (思考力)

日本人は、良くも悪くも、周囲を思いやって自分を合わせ、必要以上に言わざるを良しとする文化が発達してきたように思います。率先して行動することを避け、積極的なコミュニケーションを避ける傾向にあるともいわれています。世論調査によると、初めて会った人と話すことが苦手な人は回答者の5割を越えているそうです。

また、読み書きと算術から始まった日本の教育は、教えられたことを正確に記憶して実行することに長けている反面、自らが思考し、行動するようなことに対してはまだ消極的な面が多いと感じています。

P21が提唱する4つのCは、子どもたちが成長して社会で活躍するには必須のスキルです。ChatGPTのようなAIが話題となっていますが、新しい技術を使いこなせるかどうかは使う人次第ですし、AIではなく人間だからこそできることがこの4つのCだとわたしたちは考えています。

KDLは企業スローガンとして「デジタルで未来を創る」と掲げています。宇宙やYAOKIに触れる体験を通じて、子どもたちに生きる力を身につけてもらうことで、未来の宇宙産業や日本社会が発展していくことを願って、今後も様々な体験の場を提供していく予定です。

一昨年の当日模様の動画はこちら
Project YAOKI “Let’s experience lunar exploration” / 「月面探査を体験しよう」

昨年の実施レポートはこちら
「YAOKIと一緒に月面探査を体験しよう 2022」開催レポート【前編】

佐々木

筆者:佐々木幸一

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