2018年11月16日 10:00

安心安全なマラソン大会をサポートするGPSトラッキング検証レポート(開発編)

10月28日に開催された金沢マラソンで、自動体外式除細動器(AED)を持つ救護班とメディカルランナーの位置情報を可視化し、ランナーの安心安全をサポートする「救護メンバーのトラッキングによるランナー救援システム」の実証実験を行いました。これは、コースで怪我や体調不良などのランナーの救護活動にあたる救護班とメディカルランナーにGPSトラッカーを設置し、データをクラウドに保存してリアルタイムにブラウザで可視化することで、ランナーの救護をサポートするものです。

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電子部品・半導体などの販売を展開する加賀電子様、IoTネットワーク「Sigfox」を展開する京セラコミュニケーションシステム(KCCS)様、電子部品メーカーであるSMK様とKDLが共同で企画・機器およびシステム開発を担当し、金沢市のご協力のもと、金沢マラソンで初めての実証実験となりました。

実証実験までの経緯と当日の様子、実験からわかったことなどをご紹介いたします。

なぜランナー救護支援なのか

40キロを超える距離を大勢のランナーが走るマラソン大会では、受付、荷物管理、道路規制、救護体制、給水やトイレなどなど様々な準備が必要です。綿密な事前準備はもちろん、当日はイベント全体を本部が把握して的確な判断をするために、インカムや電話を駆使して運営にあたられます。

この大きなイベントを運営する大会本部が、もっと簡単で確実に全体を把握できる方法をITで実現できれば、よりスムーズな運営が可能なのではないかと考えました。今回は運営の中でも最重要事項のひとつである救護体制に着目。

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<総合案内と救護所>

大規模なマラソン大会では、怪我や体調不良による要救護者が必ず出ます。大会運営側は救護所や連絡体制などの厳重な対策を施し、緊急時には救護班、本部が連絡を取り合って対応にあたります。この緊急且つ正確性が求められる救護体制の全体を把握しやすくなれば、事故や緊急対応への対応に繋げられるのではないでしょうか。

また、救護の体制をデータとして取得することで、次回以降の適切な救護班の位置やメディカルランナーの人数、体制構築にも繋げることができると考えています。特に心肺停止においては、救命率は心肺停止から1分遅れるだけで7~10%も低下するというデータもあり、目安としては5分以内のAEDの利用が必要だそうです。データから救護体制を最適化することで、人命救助に貢献できればという思いもありました。

金沢市のご担当者も、「より安心・安全な運営につながるなら」とマラソン当日の実証実験を快諾してくださいました。

作りながら改善する開発

まずは、コース上に配置された複数の救護班と、ランナーとして出場しながら緊急時の対応にあたる数十人のメディカルランナーの位置情報を取得し、本部にいても瞬時に「今救護担当者がどこにいるのか?」を可視化することを考えました。ここで大きな技術要素となるのは、移動体のトラッキングです。日本ではKCCS様が提供されているSigfoxのネットワークを利用するGPSトラッカーデバイスをSMK様が開発。GPSトラッカーより発信されたデータを可視化するアプリケーションをKDLが開発し、現場の意見を取り入れながら改善していきます。

考えるより、まずはできそうなものを先に作ってしまおう!とプロトタイピング志向で可視化アプリを作成。検討会議では、実際の画面を見ながら、GPSトラッカーを持って移動してもらったり、サイズや取り付け位置なども確かめてみたりと、運用がイメージしやすくなると、検討会議では浮かばなかった意見がでてきました。

「最後尾車の位置がわかれば交通規制の解除の段取りに役立つのでは」「救護所の位置も見えると全体が見えやすいかも」「スマホで確認して、ランナーや救護所に1タップで電話できたらいいね」などなど。画面のデザインもスマホなら何を優先するかなど考えながら検討しました。随時実装してみて改善していきます。

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最終的な実証実験の目標としては、「今回のシステム構成でリアルタイムなトラッキングが可能かどうか」、「本部と救護所で救護者の位置を確認することで指示系統に活用可能かどうか」、また「トラッキングしたデータの分析により今後に活かす結果が得られるかどうか」を検証することとしました。

実証実験のリハーサル

開発が進む中、一度ちゃんと動くかどうか実証実験のリハーサルをしてみようということに。SMK様が開発したGPSトラッカーの試作機を持って、トラッキングできるかどうか試してみました。

kanazawa01_004.png<リハーサル時のGPSトラッカーの試作機>

真夏の金沢を、試作機をつけてガチで走ります。低コスト・低消費電力・長距離伝送が特長のSigfoxで、ランナーをトラッキングできるかどうか、位置情報の精度はどうか、アプリ側の動作や見やすさは問題ないか、GPSトラッカーがランニングを妨げないか、などを様々な視点から確認します。

kanazawa01_005.png<試作機をリュックに入れ、炎天下の中で十キロ以上を走る加賀電子のテストランナー>

金沢市にも運用についてヒアリングを重ね、試作機や可視化アプリの改善を重ねました。

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<最終的に完成した「GPSトラッカーユニット」
電源スイッチとテスト送信ボタン、動作状態を確認できるLED機能付き>

今年は台風被害などもあり、KCCS様の基地局の建設が遅れそう・・とかてんやわんやひやひやでしたが・・なんとか実験できそう、、というところまで持っていくことができました!

金沢市にもご協力いただき、マニュアルに説明を入れていただいたり設置の手配を整えていただいたり・・もろもろ進めて当日を迎えました。

>当日のレポート「安心安全なマラソン大会をサポートするGPSトラッキング検証レポート(当日前編)」はこちら

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