KDL BLOG
2019年12月15日(日)に、神戸市中央区のHAT神戸・なぎさ公園付近で開催された「第37回 中央区ロードレース大会」にて、「ウェアラブルデバイスを用いたマラソン・ジョギングの支援」を研究テーマとして神戸大学塚本・寺田研究室と株式会社アシックスと共に実証実験を実施しました。実証実験では神戸大学塚本・寺田研究室と株式会社アシックス様が開発を進めているウェアラブルデバイスによるランニングアシスト機能や、株式会社アシックス様とKDLが共同で開発を進めている、ランニングデータ収集アプリケーション(以下、アプリ)などを組み合わせた実証実験を実施しました。
今回は再びマラソン大会の現場に密着し取材しましたのでレポートします。
実験の概要
ランナーが身につけたBLEタグやウェアラブルデバイスにより心拍、体温、位置情報、タイムなどのデータを元にランニングをアシストする情報をスマートグラスに表示したり、大会のコースに設置した複数の検知器が、BLEタグを持っているランナーの位置を検知し、その記録をクラウドシステムを通じてアプリ画面表示やランニングデータの分析を行うことでランナーへの支援を行うものです。
ランニングデータ収集アプリで情報を共有
マラソン大会のコースに配置したスタッフが持つ検知器が、BLEタグを持っているランナーの位置を検知します。その記録をクラウドシステムを通じてアプリ画面や分析画面に反映し、ランナーの区間タイムや現在地情報を表示します。これらの情報はアプリ運用本部だけでなく、各スタッフの手元のスマートフォンからでも同一の情報を閲覧可能となっており、ランナーの状況をリアルタイムで確認できます。
KDL開発の受信機を各ポイントに設置し、スタッフはアプリを確認しながらランナーがポイントを通過した際に正しくアプリに適切に反映されているかどうか、複数人が同時通過しても問題無いかなど、様々な検証を行います。
マラソン大会の朝は早い
大会開始前の早朝よりブースの設営や準備に取りかかります。運用メンバーには現場入りしているスタッフもいれば、常に現場からの状況報告を受けながらシステム側を監視する開発メンバーもいます。今回は、サポートメンバーのシステム設計担当者であるチェンさんとも連携を取りながら運用を進めました。
出走直前には今にも走り出しそうな姿の塚本昌彦教授(ウェアラブルデバイスの伝道師と言えばこの方!)やアシックスの担当者、神戸大学のランナーを交えて事前の打合せを行い、チーム一丸で開催に備えました。
神戸大学が用意したスマートグラスにはランナーをサポートする情報が表示されていました。
しかし全員同じ格好でサングラスをして準備しているとさすがに目立つためか、神戸大学のランナー達は一般のランナーにも声を掛けられていました。
KDLからもランナーがエントリ
当日は晴天にも恵まれ絶好のマラソン日和となりました。
IoTチームが受信機やシステム、アプリの開発を行っただけではなく、KDLからも大会にランナーとしてエントリしデータ取得に参加しています。
この日の為に毎晩仕事終わりに猛特訓してきた杉本ランナー(写真右)と、休暇中にも関わらずプライベートで参加エントリしていた中西ランナー(写真左)2名で挑みます。
多くのランナーの中でも見つけやすいように、アシックス社のロゴマークが入ったビブス(オレンジ色)を着て走ります。
晴天で風も強くなく、海沿いの気持ちのよいランニングコースなのですが、いざ走って見ると浜風が強く、ランナーの皆さんは向かい風の時にはかなり苦労された様子でした。
レースではスマートグラスを神戸大のランナーと共に身につけて走ったのですが、スマートグラスを付けたままでも、そのまま走れてしまう装着感に驚いたとのこと。
柔軟な対応力が求められる現場
朝から取材を進めていると運用メンバーの真島さん、水無瀬さん達が集まりざわざわしている様子。大会エントリの人数が想定より多かったのか?詳細は不明ですが、急遽スタート時間が早まったり、手元のWi-FiルーターとPCの接続がうまく出来なくなったり、と運用メンバーとランナーの意思疎通が厳しい場面もありました。許可をもらって実施しているとは言え、マラソン大会の運営を邪魔することの無いように注意を払いながら進めることも大切なことですもんね。
広報も取材の傍らで大会の係員からの進行状況をヒアリングし、スタッフに伝えるなど全員体制で対応を進めました。
レース前には受信機から正しくデータが取得され、画面には各人のランナーの情報が表示されると皆さん一安心。真剣にPC画面を見つめるメンバーも嬉しそうです。
また、サポートしてくださったアシックスの担当者様と取材で参加したKDL広報や現場のメンバーと連携するためスマホのコミュニケーションアプリが大活躍しました。改めてスマホアプリって便利だなぁ・・・と感じると共に、今回開発したアプリもそう感じていただける日がくるのだ!と一人、決意を新たにしました。
広報も全力で現場を駆け回る
今回は広報メンバーも参戦させていただきました!前回は別メンバーですが、マラソン大会の取材は私も経験があり、KDLメンバーの誰よりも走れる格好で取材を進めました! 私自身も走りながら取材するために大会にエントリーしようと試みたところ、女子の部はコースが異なり泣く泣く断念しました。笑
いよいよレーススタート
まずは親子ペアレースからで、ご協力いただけるランナー親子にBLEタグをつけて走っていただき、レースとアプリの様子を見守ります。結果、無事にランナーのデータが受信され、レースの様子が画面に表示されていました。
いよいよ男子の部レースも開始です。杉本ランナーが余裕のピースサイン。ランナーもレースを楽しんでいる様子が見てとれます。
各スタッフの手元のアプリ画面には次々にレースの状況がアプリに表示されてきます。こうやってランナーのタイムや状況を手元で見ながらも、ランナーに声援を送ることができると、レースを見守る我々も応援に熱がこもりますね。だれでも青山学院大学の原監督気分が味わえるなぁーと感じてしまいました。
システム側でも終始順調にランナーの状況データを収集しつつ、無事にチーム全員がゴール。皆さんお疲れ様でした。
レース後にはプロジェクトを端から見守っていたという柏原執行役員も駆けつけ、無事にレースを終えたことに安堵の表情を浮かべていたのは内緒の話です。
熱が冷めないうちにプロジェクトを振り返る
イベントが無事終わればそれで終了ではありません。
翌日早速担当メンバーが集まり、今回のマラソン大会における気付きや検証結果を受けての分析などを行う、振り返り会議を実施しました。
開発だけではなく、リアルな現場での運用を体験したメンバーからは、その熱い想いから白熱した議論が行われていました。今後はユーザ、運用者の両側面より新たな機能追加の検討をしているとのことです。また、このシステムやアプリは、神戸市が進めている実証事業「Be Smart KOBE」(神戸大学、アシックス、神戸デジタル・ラボが事業者に採択されました)でも引き続き活用します。
最後に
KDLメンバーをはじめ、関係者からも今回のイベントについてはデータ取得もうまく出来たこともあり、一定の成果を感じたとの声が挙がっていました。 今回の実験結果は、1月10日に開催されるウェアラブルコンピュータ研究開発機構HMDミーティングにて報告されるそうです。
今回はIoTシステム活用の現場に出入りさせていただき、イベント成功に向けて非常に多くの方々が安全と成功に真摯に向き合い、尽力されていることを知りました。我々が開発を担当したアプリが現場でどのように活用されているのかは、社内にいるとどうしてもなかなか見えづらいものとなりますが、今回実際の現場で取材させていただいたことで、リアルな活用現場を知ることができたことは良い経験となりました。
実証実験にご協力いただきましたアシックス・神戸大学の皆様を始め、神戸市運営の皆様、誠にありがとうございました。
執筆:大野 陽子
広報室