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KDLの有志メンバーで、日本IBM社が主催する事業アイデア創出コンテスト「DXチャレンジ2020」に参加いたしました。ここでは、参加して支援していただいた概要や体験、感想をレポートいたします。
DXチャレンジとは
DXチャレンジとは、日本IBM社が主催するイベントで、最新のデジタル・テクノロジーを活用して、業界や地域社会の課題を解決する新しいアイデアを創出し、事業化を目指すためのコンテストです。アイデア創出やサービス開発にあたっては、DX提案に求められる共創型営業スキルやアジャイル開発手法の習得も支援いただけます。
2020年は、地域社会・経済への貢献、業界の発展に貢献、社会的問題の解決などテーマが決まっており、IBMのテクノロジーを利用したアイデアであることが条件でした。
今回は社内募集でチームを結成、7名1チームで参加して参りました。
自分たちのテーマを決める
応募に当たっては、まず初めにどんなテーマにするかをチームで検討しました。
「社会課題を解決するテーマがいいなあ」
というチーム代表の佐々木の言葉で、災害対策やバリアフリー、高齢化社会などで気になるテーマについて各自意見を出していきました。最初はみんな思い思いの発言で発散していたものをちょっとずつまとめ、最終的に決まったのは、「ずっと元気に仕事を続けていきたい」というチームみんなの想いを実現し、且つシニアの人財を活用して高齢化社会に貢献するための企画。
仕事愛が強いKDLのみなさんです(笑)。
無事テーマを決めて応募完了。応募が通ったあとは、一次審査、二次審査、地区大会、そして最終審査の全国大会という審査ポイントがあり、それに向けてIBM社から支援をいただきながら企画、開発を進めていきます。
Design Thinkingワークショップ
DXチャレンジでは、IBM社が応募企業向けに開催するDesign Thinkingと呼ばれるアイデア創出のワークショップに参加したりエンジニア向けの勉強会などに参加しながら進めます。
応募して最初の審査までに開催されるDesign Thinkingワークショップでは、デザイン思考を用いた「ユーザー」起点の考え方で、アイデアの創出、整理、優先度決定などを数時間ずつ数日間行いました。従来は集まって開催だそうですが、今回はオンラインで開催ということで、各チームもチーム内のメンバーもそれぞれが遠隔からの参加でした。
ここからは、パートごとにどのようなことをしたのかご紹介します。
ペルソナ設定、共感マップ
最初は、ユーザーを理解しニーズを設定するパートです。今回はチームメンバーのひとりで「私も長く仕事を続けたいです」という森本さんをモデルにペルソナを設定。性別、年齢、家族構成、職業はもちろん、好きなものや嫌いなもの、性格などを設定します。
そして、共感マップでペルソナの思考、喜怒哀楽などの感情、そして発言やふるまいを具体化していきました。
家ではこんなことで楽しんでいるだろう、こういうときに悩んだりするんじゃないか、などユーザーの生活や考え方をイメージしながら、マップに落とし込みました。
シナリオマップ
ユーザーの喜びや悩みを発見するために、テーマ周辺のシーンごとに、ユーザーがどのような思考をするか、どう立ち振る舞い、どう感じるかを出していきます。このペルソナの環境や考え方、家族構成だったらこのシーンに当たったときに何をする?どんなことが起こったらうれしい?という思考を通して、徹底してユーザーになりきる、「ユーザー目線」を鍛えるパートだと感じました。
目標の丘
ここでは、これまでにない「わお!」という経験を考えます。抽出した課題に対する改善案や方法論はすべて取り除いて、どんな体験をしたら「だれにとって」「何ができる」「わお!(感動)」をそれぞれひねり出してつなげ、言語化します。
癖づいてしまっている思考や日々の生活で凝り固まった頭から離れなくてはいけません。ついつい手法や課題を考えそうになってしまうたびに首を振って戻します。とにかく纏まらなくても一旦アウトプットしていくことが大事だと思いました。アウトプットすると、チームの誰かのアウトプットとつながったりメンバーによってアップデートされたりします。これがチームでやる大きなメリットのひとつですね。
ある程度出したら投票して絞り込み、実現可能性と、感動・重要の具合で優先度を決めます。
毎回のDesign Thinkingのワークショップや社内の企画会議のときは、チーム全員終わりごろにはヘトヘトになっていました。普段と違う運動をすると疲れて筋肉痛になったりするのと似た感じですね。
1次審査へ
さて、ここまでワークショップに頼り切りで、意見を発散しまくりながらふんわりと決めてきた私たちですが、ここからが更なる試練でした。膨大な事業計画書と、まだ実態のないサービスのプレスリリースを作成しなくてはいけません。ワークショップでは様々な意見が広く出て視点が広がり、学びも大変多かったのですが、そこから収束させるところまでたどり着いていませんでした。
定期的に集まるものの、なかなか事業化のイメージにまとまっていかず、分担して思い思いに書いたものを繋げて少しずつ収束していきました。発散したアイデアを収束させるには、ひとつのストーリーを意識していくとよいと気づきました。
余談ですが、今回はコロナの影響で打ち合わせのほとんどを遠隔で行い、作成する提出物も遠隔で共同編集という方法でした。ストレスなくリアルタイムにやりとりできていたのが印象的ですね。同じ場所にいなくても企画はできる、ということを実感した日々でした。
MVP開発
コンテストでは、MVPを開発しました。MVPとは「Minimum Viable Product」の略で、顧客に価値を提供できる最小限のプロダクトのことを表します。最小限の機能で市場にリリースし、実際のユーザーの反応をみながら改善をしていくプロセスの最初のものです。ミニマムで且つ重要で、「わお!」を体験できるところを検討して範囲を決定しました。
必要な画面をデザイナーの岩崎さんが主に検討し、並行して利用する技術をエンジニアの岡藤さん中心に開発、チェンさんが技術支援をし、データ分析部分のアルゴリズムはデータサイエンティストの中川さんが担当。多方面のプロが在籍しているKDLの強みを活かした開発です。要件定義なんてありません。UIと体験だけ決めて、手探りで開発を進めました。
KDLのチームの開発メンバーは、IBMのクラウドサービス「IBMクラウド」は初の挑戦でしたが、初めてでもクラウドに関する既存の知識があればすぐ利用することができ、またAIモデルも使いやすい印象だったとのことです(チェンさん談)。
苦労した企画が実際に動くアプリになったのを見たときは感動しました。
結果は・・・
提出書類や動画のアップデートを繰り返しながら1次審査、2次審査を通過し、もしかしていけるんじゃないかと期待に満ちて臨んだ地区大会はオンラインによるリアルタイムのプレゼンでした。審査員の方からのフィードバックをその場でいただける機会と言うのは大変貴重ですね。結果は、、惜しくも敗退でした。
◎プレゼンテーション動画はこちらからご覧いただけます
https://ibm.ent.box.com/s/1zgi8jdz5ysjf1ofqdexao6udyuuzrv3
振り返って
終了後の振り返り会では、参加したメンバーからは、次のような様々な意見、感想がありました。
- デザイン思考の流れをリードしていただいて学ぶことができた
- ビジネス立ち上げに必要な計画の立て方など、今後に活かすことができると感じた
- 自分の力を試すよい機会になった。自信になるとともに課題を見つけることができた
- チームで一丸となってひとつの企画をまとめ上げる楽しさと苦労を知った
- 来年もチャンスがあれば出場したい
「〇〇できるようにしたい」「〇〇な機能が欲しい」のようなご依頼にお応えすることが多かったSI業界ですが、近年はどのような「体験」をしてもらうか?そのために何が必要か?という考え方が標準になりつつあります。そのような「デザイン思考」の一連の流れを知り、またアイデアを広げ右脳を使うトレーニングをぎゅっと凝縮して体験できたコンテストでした。
引き続き今回のプロジェクトは事業化に向けて検討を続けて参ります。主催者の皆様、ありがとうございました。
筆者:松丸恵子
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