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課題解決のためのモノづくりに必要な「センス」の正体とは?
エンゲージメントリードのCX/UXデザイナーの岩崎です。
デザイナーという職業をしていると、よく聞くキーワードに「センス」というものが、あります。
デザイナーに限らず、モノづくりに携わる人だけでもなく、そもそも「センス」というものは、人間に一定量備わっているものだと思っています。
では、「センス」って、一体どういうものなのか?今回はデザイナーの視点からお話ししてみようと思います。
「センスあるんですね!すごい!」皆さんの思うセンスってどんなもの?
デザインの勉強をしていたり、自分がデザイナーであることを伝えると「センス、才能があるんですね、羨ましい」などといった感じの反応をいただけます。同職種の方にもご経験がある方はいらっしゃるのではないでしょうか。デザインを専門としていない人たちからすれば「デザイン」≒「アート」といった印象であり、それには
「センス」や「才能」が必要で、誰にでもできるものではないのだろうな、と感じられているのだと思います。
センス、それは、生まれもったもの?
おそらく「センス」というものは「生まれながらに備わっている天賦のもの」で、その量は生まれた時にはすでに決まってるのだ、というイメージをお持ちの方は多いのだと思います。しかし、私個人の考えから言わせてもらえると、デザイナーに「天賦のセンス」が必要か? と言われるとそれは必須ではない、と思います。ただ生まれ持ったそれがあることは、高次のデザインセンスが必要とされるような世界に到達する場合には、影響があるのかな、とは思うのです。その世界とは例えば絵画などの「アート」の世界だったりします。
生まれ持ったものが存在することは間違いないと思いますが、私たちが携わっているいわゆる「商業デザイン」、社会に広く役立つためのものを作り出すデザインには、後天的に経験、知識として身につけていくものの方が、よほど重要であると言えます。
センスの正体
20年近くデザインという職業に携わってきて思うことは、「商業デザイン」に必要とされるセンスとは、さまざまなモノづくりに携わってきた結果、自分の脳に蓄積していった経験、知識、つまり「情報」なのだと思います。
デザイナーの駆け出しの頃、私はゼロからデザインを生み出しているかのように見える先輩方を、尊敬の眼差しで見ていました。しかし、本当のところ、デザインは何も与えられていない状態、「ゼロ」から生み出すことはできないのです。
さまざまなインプットがあってこそ、生まれる優れたデザイン
「アイディアはコピー&ペーストだ」とよく言われますよね。1つのアイディアからのコピー&ペーストは単なるパクリになってしまいますが、良いアイディアはたくさんのアイディアの中から生まれたりします。デザインも同じです。より良いデザインを生み出すためには、できるだけたくさんのアイディア、情報が必要となってきます。それらは、過去に自分が創り上げたデザインだったり、日常的に触れているモノだったり、体験だったりします。また、それらのインプットはモノ・体験だけでなく、「コミュニケーション」であったりもします。
デザインには、良いコミュニケーションが必須
これから必要とされていく「優れたデザイン」とは、1人の担当デザイナーが、与えられた限られた情報だけを元に創られるものではないと思います。本当に必要とされるデザインは、良い「コミュニケーション」の中から生まれます。一般的にデザイナーは制作にフォーカスされがちですが、せっかく良いアウトプットを生み出せたとしても、ステークホルダーから支持されなければ意味がないのです。それぞれの立場の人たちの優先事項は異なります。それらを汲み取り、共感し、それを踏まえて形にしていく。デザイナーには、制作スキルに加えて「聞く力」「伝える力」も求められているのだなと、痛感することが多いです。
心を動かすデザインを生み出すセンス
なぜこのデザインなのか、優れているのはどういうところなのか、それらをしっかりと伝えられて、ステークホルダーに支持される、そして最終的には経営層の心を動かすことができて初めて「社会をより良くするための商業デザイン」は、世に送り出される形へと、進んでいくことができます。制作に必要なセンス、スキルを日々磨き続けることは当然必要ですが、優れたデザインを生み出すために、私たちデザイナーはビジネスパーソンとしての「聞く力」「伝える力」のセンスも蓄積していかなければいけないと思っています。
執筆:岩崎 紀子
デジタルビジネス本部 Engagement Lead