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業界分析をしてみよう(1):教育

こんにちは、エンゲージメントリードの佐々木です。 

私は職業柄、普段から様々な業界を分析しています。
その中から、今回は教育業界について考察してみます。

教育は大きく公教育と私教育に分類されます。公教育とは国または地方公共団体が管理する教育を総称します。私立学校や専修学校も含まれます。いわゆる「学校」ですね。一方の私教育は公教育以外の教育を指します。分かりやすいのは「塾」でしょうか。私教育において、最近ではプログラミング教室が子どもたちには人気で、大人にはリカレント教育の重要性が謳われています。また教育業界ではテクノロジーをベースとしたEdTechと呼ばれる新たな事業領域が発展してきています。 

教育業界を取り巻く環境を見てみましょう。 

日本の概況

政治面:学習指導要綱改訂 

これまでほぼ10年毎に見直しが行なわれてきました。直近では平成29-31年改訂があり、社会環境の変化に対応すべく外国語教育・プログラミング教育・アクティブラーニングなどが取り入れられました。 

経済面:教育費の増加 

家計での一人にかかる教育費は、1970年の2.4万円から2017年には約16倍の37.1万円へと増加しています。この間の消費者物価指数の上昇率は約3.1倍ですので、家庭内での教育に関わる支出が多くなっていることが分かります。また、教育費の用途として最近ではプログラミング教育の人気が高く、2022年の市場規模は302億円程度で、2030年には1,000億円超に拡大する可能性があると言われています。 

社会面:人口減少 

戦後の高度経済成長により人口は増加し続け、2010年には総人口1億2805万人となりました。しかしその後は減少を続けています。2021年の総人口は1億2550万人で、64万人の減少となりました。減少幅は1950年以降で過去最大です。 

技術面:IT技術活用 

令和元年に文部科学省がGIGAスクール実現推進本部を設置し、教育ICT環境の整備を行いました。生徒1人に1台のコンピュータが割り当てられ、コロナ禍でのオンライン化の加速もあり、IT利用が当たり前になってきています。 

いつまでも安泰の業界は無いでしょうが、教育業界においても様々な外部環境の変化が起こっています。その中で各企業はどのような取り組みをしているのでしょうか。 

教育業界の雄である株式会社学研ホールディングス(以下、学研)は、資本金198億円、2021年9月期連結決算で1,502億円を売り上げ、プライム市場に株式公開しています。昭和22年の設立時は学校向けの学習用書籍出版事業から始まり、分野を医学や科学へ拡大、海外展開も進めながら、対象年齢を介護が必要なシニアから就学前の幼稚園まで広げています。また進学塾を開校するなど、多角的に規模拡大してきた伝統企業です。 

学研のIT技術活用の中心としては、GakkenIDという学研の各サービスで使える共通IDの仕組みがあります。教育業界に限らず様々な業界で「IDの共通化」がシステム課題として挙がることを多く目にします。事業が多角化していく中で、顧客を一意に特定し各サービスの提供状況を横串で管理をすることは、顧客接点の貴重な機会をデータで捉える有効な手段だと各社が気付いているのでしょう。そのデータを活用し、顧客アプローチを包括的に行えるサービスやツールが充実してきたというデジタル面での背景も影響していそうです。事業やサービスが多角化している企業にとっては必須課題だと思います。 

また、「マナビスタ」という家庭学習応援サイトで授業動画を公開しています。外からでは分かりませんが、視聴履歴のデータを取得できているのであれば非常に価値のあるビッグデータが学研内に蓄積されていると想像できます。コロナ禍によるオンライン化に貢献することは当然のことですね。 

競合では株式会社ベネッセホールディングス が先行しています。 

主力事業の進研ゼミでは、一人ひとりの学習履歴をデータ分析し、最適な学習提案を提供することで顧客価値を高めています。他にもAIを活用したデジタルマーケティング活動や、量的なユーザーデータ分析とユーザーテストを通してのサービス改善を繰り返しています。これらのIT活用は広く評価され、経産省・東証のDX銘柄2021への選定や経産省のDX認定を取得するなどし、デジタル活用を積極的に行っていることがうかがえます。 

デジタル活用だけが要因ではないと思いますが、こういった取り組みは業績にも良い影響を与えています。直近年度の業績では、売上高 431,943百万円(学研の約2.8倍)・時価総額 212,630百万円(学研の約5.5倍)と大きな差をつけて成長しています。2020年には米国Udemy社へ約54億円を出資しリカレント教育事業も強化しています。今後、更に高い成長性が期待できるのではないでしょうか。 

時価総額が学研の約5.5倍のベネッセホールディングス。学研の従業員数7,995人(2022年10月時点)に対して、16,515人(同)と約2倍という点も注目に値すると考えます。 

また、リアル空間では株式会社ドワンゴが独自開発したN高等学校・S高等学校がドワンゴらしさあふれる教育スタイルで特徴的です。 

通通学だけでなくネットコースが設置され、プログラミングや語学を学び、ネット上でVRゴーグルなどを利用し部活動を行っています。農業・漁業体験やLGBTQに関するトークイベントなど社会課題についても学び、海外進学へのコーチングなど多様性のあふれる学びを受けることができます。 

2016年のN高開校以来、S高と合わせて2万名を超える生徒に教育機会を提供してきました。ドワンゴの親会社である株式会社KADOKAWAの時価総額は395,861百万円(学研の約10.4倍)となっていることからも成果に結びついていると思います。 

海外の現況

海外にも目を向けてみましょう。 

学研は、マレーシア・ミャンマーに拠点を持ち、ベトナムでは現地教育プラットフォームのKiddiHubと業務資本提携をし、中国ではSTEAM教育市場を狙った新会社を設立、イラクでは科学教育強化事業を展開しています。 

市場という観点では、インドやアフリカ大陸などの人口が多い(増加する)国に機会が多くありそうです。 

インドでは教育プラットフォームをデジタル空間上で展開しているBYJU’s社という企業が躍進しています。同社は2025年までに1,000万人に対して「無料」で教育プログラムを届けることを目指しています。教育コンテンツを持つ日本企業としては、BYJU’s社に「相乗り」しておけば同社の米国進出に合わせて自社コンテンツが自動的に販売拡大されていくスキームを取ることができるかもしれません。グローバルで活動している企業を逆利用することにより自社の成長を促す戦略です。 

アフリカ大陸では、世界の中で突出した人口増加が想定されています。サハラ砂漠以南のサブサハラアフリカでは、他地域に比べ高い出生率を保っています。2019年時点の10億6600万人から、50年後には21億1800万人に倍増すると予測され、2100年には約38億人と世界の人口の3割強を占める見通しです。これから生まれ育っていくアフリカの子どもたちへ日本の教育ノウハウを提供することは、現地経済成長に大きく寄与できるかと思います。 

教育業界におけるデジタル活用は、未来を担う多くの子どもたちに学習の機会を届ける重要な要素になり得る筈です。KDLでは、デジタル・コラボレーションサービスを提供することで、お客様の事業成長に伴走しています。いまはまだ公開できませんが、教育の観点でもある仕掛けを準備中です。情報公開できるようになれば改めてお知らせさせていただきます。皆さまとご一緒に素晴らしい未来社会を構築できればと考えています。 

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佐々木

筆者:佐々木幸一

エンゲージメントリード