普段の生活に寄り添う「料理レシピ提案アプリ」、人数カウントや侵入検知、動物の生態観測。いずれもKDLが提供するAIと連携したソフトウェアの開発事例です。
生成AIが盛り上がりを見せる中、2023年10月にはMicrosoftのAI
Co-Innovation
Labsが神戸に開設されました。KDLのお客様からもAIを活用したいというご相談が増えています。
「真にお客様の役に立つこと」はなにかを考え続けるKDLのAI専門チーム
デジタルビジネス本部Data
Intelligence(DI)チームのメンバーに聞きました。ずっとSIをやってきたKDLとAIを始めるメリットとは。
山口 耕平やまぐち こうへい
Data Intelligenceチームリーダー
1985年生まれ、兵庫県出身。2008年、KDLへ新卒入社。ECなどのWebシステム開発に従事した後、大学との共同研究をきっかけにデータ分析技術に携わるようになる。2019年のData
Intelligenceチーム発足時よりリーダーとして、AI・データ活用案件のマネジメント、IT人材育成などに取り組む。
佐伯 佳則さいき よしのり
Data Intelligenceチーム所属
1987年生まれ、愛媛県出身。IT企業勤務、ネットショップ経営などを経て、大学院で情報工学・AIを学ぶ。2022年、KDLへキャリア入社。現在は、画像認識AI導入サービス「KDLCam」のサービスオーナーを務める傍ら、システム開発にも携わる。
小売店や駅、オフィスの人流計測にぴったりのAI「KDLCam」
「KDLCam」は、カメラとAIを掛けあわせて、オフィス監視や画角内の人流計測ができるサービスです。
AIを導入する際にAIに一から学習させると、大量の学習データの準備やその精査、システム環境の準備などでコストが跳ね上がりますが、その点KDLCamは大手クラウドベンダーが提供する学習済みAIサービスを利用しているため、用途は限られますが比較的安価に導入できます。2023年4月にサービスを公開してから毎月コンスタントに様々な業種業態からお問合せをいただいています。2023年末ごろから、さらなるユースケースをご提供できるようにKDLオフィス内でも実証実験を開始しました。
例えば、勤怠システムや危機管理アプリといった既存システムとの連携やカスタマイズも可能です。そこはKDLのSIの強みを生かして、システムの一部にKDLCamを実装する、お客様のニーズにあわせた出力形式にする、など柔軟に対応できます。
小売店や駅、オフィスの人流計測にぴったりのAIです。コロナ禍が明けて、多くの企業がオフィスをどう有効活用するかについて悩む中、人流計測は最も信頼できるファクトデータとなります。
KDLCam実証実験中
エリア内にいる人数を自動でカウント
以前AI関連のセミナーに登壇した際、コールセンターのマネジャーをされている方が相談に来てくださいました。現在使用中のシステムでも稼働状態は分かるが、システム上の数値と実際の稼働人数にずれがあるという課題をお持ちで、KDLCamを使ってコールセンタースタッフを検知し人数を把握することで目とシステムの両方で管理できないか、というご相談をいただきました。一つの軸だけでなく、もう一つのファクトデータが欲しいというときに、大変有用なサービスがKDLCamです。
これからの画像AIは
現在、私が大事にしているのは、AIを脅威として捉えない為にもAIを一段階深めて理解していただきたいということです。お客様には、「AIは魔法みたいなことをしているわけではなく、データを数値化して、計算して、その結果を出している計算機。普段業務で使っているエクセルやパワーポイントと同じようなツールとして考えてください」ということをしっかりお伝えしています。
2023年11月に学習なしで一般的な物体の検出や文字認識、画像の解釈をすることができる生成AI「GPT-4 Turbo with
Vision」が登場しました。KDLCamにも生成AIの画像認識機能を取り込み、お客様に更に利便性を感じていただけるよう開発を進めております。
原口 俊樹はらぐち としき
Data Intelligenceチーム所属
1996年生まれ、兵庫県出身。大学の研究室で白黒写真を自動で彩色するAI技術に出合い、AIにハマる。2021年、KDLへ新卒入社。現在は、画像認識技術を用いて、幅広い業種のお客様のAIシステム開発に取り組んでいる。
átoa様の「カピバラ」「コツメカワウソ」の生態観測
インターンシップ制度を使い、神戸の学生をAIエンジニアとして育てられないか?とDIチームで話していました。
地域ICT推進協議会様(※3)や神戸市、地域の企業を巻き込んで活動したいと考えていました。以前からお付き合いのあった劇場型アクアリウムátoa様から、「飼育する生物の生態観測がしたい」とお話をいただいていたこともあり、受け入れをお願いできないかお声がけさせていただき、実証実験がスタートしました。
※3 地域ICT推進協議会様:通称COPLI(コプリ)。兵庫県神戸市を中心とした地域へのICTの普及・浸透を目指す産官学民連携によるコンソーシアムです。
átoa様の抱えていた課題は、「日々の飼育で記録を取るのが難しい」「生物の体調が悪くなる前の兆候を知りたい」「あまり解明されていない生物の行動(生態)を知りたい」というもの。追跡や行動分析のデータをとり続けることができれば、そのデータを分析することで、動物の行動の意味が理解できたり、何か学術的な新しい発見もあるのではないか、またそれを展示にも活かしていきたい、とお考えでした。
átoa様から、動物にマーカー(センサー)などは付けず、できるだけストレスをかけない方針で進めたいとお話いただきましたので、展示エリアに設置するカメラを一台だけにするなど、飼育環境に影響の少ないデータ取得方法を目指しました。
átoa様のコツメカワウソ(カピバラと同じく飼育員様イチオシ写真)
現在は、カピバラとコツメカワウソの行動分析をしています。カメラから取得したデータをAIで分析するシステムをKDLが開発しています。このシステムで用いているAI技術は物体検出で、データの取得・分析プラットフォームにはMicrosoft
Azureの様々なサービスを利用しています。
いまは、このあたりによく居る、日中はこういう行動をすることが多いといった情報や、二匹以上いるときのその間の距離などのデータを取得できています。将来的には個体識別もしたいとのご要望をátoa様からいただいていますので、個体識別に注力することでどんなコンテンツを作っていけるのか楽しみです。
分析データをもとにátoa様側で今後何をAI化していきたいかイメージを膨らませていただき、飼育員様の欲しいデータを明確化していきたいと思っています。最終的にはデータ取得から分析までを自動化する予定です。
垣内 優花かきうち ゆうか
Data Intelligenceチーム所属
1996年生まれ、兵庫県出身。2019年、KDLへキャリア入社。Web・AIシステム開発にエンジニアとして携わり、プロジェクトマネジャーも務める。2023年からは「生成AI導入の秘訣」をテーマに多くのセミナーへ登壇している。
Azure OpenAI Serviceとは
Azure OpenAI
Serviceは、OpenAI社が開発した様々なAIモデルをMicrosoft社が提供するクラウドプラットフォームAzure上で利用できるサービスです。TeamsなどのMicrosoft製品と連携がしやすく、利用者が入力したデータをAIの学習に使わないというデータ保護観点での強みがあるため、企業や自治体などから注目を集めています。
大規模言語モデル(以下、LLM)は作る・探す・考える・まとめるなどが得意なので、それを掛けあわせてチャットボットを作る、お問合せに対応するといった利用が考えられます。こういうと万能だと思われがちですが、LLMは、計算と最新情報に関する質問には正しく答えられません。
LLMを活用するには、LLMを使ってうまくいったこといかなかったことを積み重ね、その取り組みを振り返り、得られた学びを周囲へ共有していくことが大切です。そうやって企業内でAIを日常業務に導入する土台を築いていくことができれば、LLMを活用する文化が企業に根付いていくのではないでしょうか。
KDLが開発したデモアプリについて
今夜のメニューは豚肉とキャベツの炒め物
このデモアプリについてKDL
BLOGでもご紹介しています
展示会で好評だったものに「冷蔵庫にある食材からレシピを提案してくれるアプリ」があります。2023年6月に日本マイクロソフト株式会社の品川オフィスとオンラインで開催されたイベント「Microsoft Build Japan」に向けて制作しました。このアプリは食材の情報のみならず、家族構成や好き嫌い、アレルギー、疾患情報も加味して、メインディッシュを三品提案してくれます。デモに使った料理画像はほとんど画像生成AI「DALL・E(ダリ)」で作るなど生成AIの可能性を楽しんでもらうことにこだわったアプリになります。
生成AIへの疑問と期待
お客様からいただく生成AI関連のご質問には大きく2つあります。まずひとつは「ほかの企業さんでどれくらい使われていますか。効果は出ていますか」という質問です。もうひとつは、「生成AIの事例、どんな使い方があるかを教えてほしい」という質問です。
ChatGPT登場以前の言語に関するAIと言えば、対象の文章からキーワード・キーフレーズを抽出するといった使い方が主でした。まるで人間同士のように会話(チャット)ができるChatGPTのようなサービスの普及は大きな一歩です。「やっと使えるものが出てきた」という期待も大きい。ChatGPTが登場する前までは「DXやAI=大手製造業への導入が多い」という傾向がありましたが、最近は建設業・運送業の会社からのお問合せやヘルプデスク部門・研究部門など書類を多数持つ企業からのご相談が増加しています。そこが、今までのDX、IT投資と違うと感じています。
KDLのAIサービスの強みを山口耕平に聞きました
ご紹介させていただきましたようにKDLのAIサービスは様々です。KDLは、SIとして培ってきた「お客様の売り上げが上がるにはどうすればいいのか」「お客様の課題を解決するために本当に必要なものはなにか」という観点で、AI開発にも取り組んでいます。
今は私たちも「AI専門チーム」として取り組んでいますが、AIはあくまでもひとつの手段です。この先、他の技術と同じように、お客様がシステムを導入される際の選択肢のひとつになっていくものだと思っています。
我々のバックボーンはSIを主力とするIT企業です。広い視点で、真にお客様のお役に立つソフトウェアをご提供しています。AI導入をご検討の際はぜひご相談ください。
今回話を聞いたData Intelligenceのメンバー
KDLは、2023年12月20日付で代表取締役社長・永吉一郎(写真右)が退任し、同日後任として玉置慎一(写真左)が就任したことをお知らせします。これに伴い永吉一郎は、取締役会長に就任し、引き続き経営に携わります。
KDLは、お客様のビジネスを通じて、また事業を通じて社会に貢献し、「デジタルで未来を創る」企業として成長していきたいと考えています。
今後とも新社長及びKDLをどうぞよろしくお願いいたします。
一般社団法人Jump Festivalに オールウェザーマットを 寄贈しました
KDL衛藤昂が代表を務める一般社団法人Jump
Festivalに、ジャンパー達がスパイクで競技を行えるように敷くオールウェザーマットを寄贈しました。
昨年神戸市長田区で行われた街中走り高跳びエキシビジョンマッチ「JUMP
FESTIVAL in KOBE 2023」で贈呈式が行われました。跳び初め式ではKDLの永吉一郎が審判を務めました。
衛藤は、リオ2016 夏季オリンピック、東京2020
夏季オリンピックの二大会にも出場経験を持つオリンピアンで、高等専門学校出身者として初めて夏季五輪に出場し走高跳の日本高専記録保持者でもあります。2022年からKDL・新事業創造係に所属し、ローコード開発プラットフォーム「Microsoft
Power
Platform」での開発やセンサーを使った運動データ取得に関する実証実験などに取り組んでいます。
Jump
Festivalは、「ジャンプでみんなにワクワクを」をビジョンに、街中スポーツイベントや陸上競技大会の開催、運動教室、講演などを行う団体です。
KDLは今後も一般社団法人Jump Festivalを応援してまいります。
ホームページ:https://jumpfestival.jp/
市民参加型フェスティバル 「078KOBE」に協賛し、 カンファレンスに登壇しました
2023年11月に開催された市民参加型フェスティバル「078KOBE」。今回からKDLの永吉一郎が実行委員長を務め、KDLは「Diamond
Partner」として協賛しています。
「078KOBE」は、都市生活の面白みと心地よさを追い求める市民、アーティスト、クリエイター、エンジニアが集い交わることにより生まれる参加型イベントです。
11月23日には「AI技術の進化と地域社会の変革」カンファレンスにKDL執行役員の村岡正和が、翌24日のイベント「サイバーセキュリティ・サミット:サイバー脅威から神戸のカルチャーを守るには」にはKDL執行役員でCSAの岡田良太郎が登壇しました。
コーポレートサイトを リニューアルしました
2023年10月、KDLはコーポレートサイトをリニューアルいたしました。
今回のリニューアルでは、コーポレートサイトをご利用いただく皆さまに、私たちの事業や取り組みをよりわかりやすくお伝えできるよう、情報を整理しデザインを一新いたしました。
引き続き内容の充実を図り、最新の情報を発信してまいります。
「AIはKDLの腕の見せどころ」と言える理由
2023年に生成AIは大きな盛り上がりを見せました。ChatGPTのユーザー数の増え方(※1)がその最たる例です。世の中一般の人たちが高い関心を持っていると感じました。
※1 スイスの銀行USBの調査によりますと、ChatGPTは、2022年11月30日の公開からわずか3ヶ月で推定1億2,300万のアクティブユーザーに到達し、過去最速で成長したアプリとなりました。
AIの便利さが一般の人たちに伝わっているのはKDLにとって嬉しい変化ですが、「AIを便利に使うためにはどうすればよいか」、その具体的な方法までご存じのお客様は少なく、ここはSI(システムインテグレーター)であるKDLの腕の見せどころというわけです。
KDLがデータ分析・AI技術に本格的に取り組み始めたのは、2011年頃です。KDLが京都大学と行った共同研究がきっかけだったと思います。
当時、 SNSを起点としたソーシャルグラフのような人と人とのつながりを可視化するデータ分析技術が流行っていました。川崎重工業様から「少ないデータからでも分析ができる技術はないか」とお問い合わせをいただき、KDLが京大と共同開発した「関係性技術」を用いることで、1000件程度のデータでも相互のつながりを可視化できるツールを実現化できました。これが、KDLがAIに携わる大きな一歩となりました。
最近、企業がAIへ取り組む姿勢に変化が
最近では、画像AIについてかなり具体的なご相談が増えています。例えば「社内にこういう問題があり、それを解消したい」など、ある程度お客様側で導入についてのイメージをお持ちです。そのイメージは我々から見てもほぼ核心をついたものです。一般の人たちのAIへの認知度が上がり導入へのハードルが下がっていることで、企業側も予算化しやすくなり、お問合せも増えているのではないかと感じます。
企業が生成AI導入を考えるときのコツは?
画像AIに比べると、生成AIのほうは、ユーザー企業の皆さんもまだ用途が絞り切れておらず、どのように社内に導入するのかというイメージが具体的になっていないという印象があります。生成AIを社内に導入する前に、一度ChatGPTを使ってみて、「これを社内の何に使うことができるか」をイメージしてみることをおすすめします。 ChatGPTはOpenAI社がつくった生成AIですが、Microsoft社がOpenAI社に大型投資を行ってパートナーシップを結んでおり、OpenAIも手がけるAIモデルのトレーニングにMicrosoftのクラウドサービスAzureを活用しています。そのため、ChatGPTとAzureの組み合わせは相性がよく、システムも作りやすいという特長があります。
Microsoftと様々な取り組みを行っているKDLでは、Azure OpenAI Serviceの導入支援をはじめ、AI以外でもAzureをプラットフォームとしたシステム開発案件など、多くのAzure開発実績があります。
Azureは開発環境の準備や変更が簡単で、システムで利用するリソースやサービスをポータルから一元管理でき、プロトタイプ開発などが容易です。Azure上で動くAzure OpenAI Serviceは開発がしやすく、機能追加の頻度が高いためツールとして洗練されていくスピードが早いこともビジネスには有利に働きます。そういった理由から、エンタープライズ利用はAzure OpenAI Serviceをおすすめします。
SIをやってきたKDLだからできること
KDLには、SIをやってきたからこそのノウハウや技術力があります。それは、AIという技術を使いやすいソフトウェアで届けることができる、ということです。
私は、ソフトウェアは、技術に詳しくない方にも使いやすい状態でお渡しするものだと思っています。たとえば、人の行動パターンを分析し表示できる画像認識AIがあります。お客様に「知りたいのは人数と動線」とご指定いただければ、該当エリアを通った人の数や動線、動線上の行動割合といったデータをグラフ上に可視化する「使いやすいソフトウェア」をKDLはご提供できます。運用開始後も都度出てくる課題に応じてお客様と一緒にソフトウェアを成長させ続けていくことができます。難しい技術をお客様に合った使いやすい状態でご提供できるのはKDLがSIで培ったノウハウがあるからこそです。
átoa様のカピバラ(飼育員様イチオシ写真)
具体的な事例をご紹介すると、「KDLCam(ケーディーエルカム)」という画像AIサービスでは、「人」にフォーカスし、人の導線の把握や、危険エリアに入った人の検知に取り組んでいます。
また、オーダーメードの画像AIは、動物や工場のラインなど特定されるもの(人以外)を対象としています。今は劇場型アクアリウム「átoa(アトア)」様(※2)で実証実験も行っています。
※2 劇場型アクアリウム「átoa」様:兵庫県神戸市にあるアクアリウムとアートが融合した新感覚の都市型水族館。魚類を中心に無脊椎動物や両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類など多様な生き物が飼育されています。