事例紹介

AIを活用した業務効率化のPoCで無駄な投資を回避し課題がクリアに

AI活用により動線と端子台の番号の接続情報を電子化したイメージ図
プラントおよび建築物の機械・電気設備に関する開発、設計、製作、施工、メンテナンス会社
#AI

お客様は、プラントや建築物の設備に関する企画、設計、施工、およびメンテナンスを中心に、日本の代表産業を支える事業を広く展開されています。このたび、AIによる電気設備の工事・メンテナンス業務の効率化を目的としたシステムのPoCをKDLで担当させていただきました。

設備などの現場に設置されている各種盤内における、端子台と電線の接続状態の調査を、画像解析で効率化できるかどうかのPoCを行いました。

具体的には、現在人力で接続状態を調査している作業を、画像解析技術を使って効率化するために、実現可能性と考えられる作業手順について検証し、報告させていただきました。

盤内の調査業務効率化の背景

機械や設備の現場では、電気を変圧したり分電したり、機械を制御するための機器を格納する、各種「配電盤」が数多く設置されています。この中には、規模の差はあれ多くの端子台が収められており、電気回路や電気機器との電線を接続しています。端子台および電線には、それぞれ端子番号と線番号が記載されており、接続状態が厳密に記録・管理されています。

これらは、設備の増改築や装置の入れ替え、メンテナンスなどの際には設計図どおりに接続されているかの調査が必要になります。多い時には調査点数が数千にものぼりますが、現状は目視で行うのが一般的なのだそうです。

接続状態の調査のイメージ

この調査の効率化のため、盤内の端子台の写真を撮影して端子番号と線番をOCRでデータ化するシステムの開発を、お客様企業から当社にご相談いただきました。

支援のプロセス

PoCのご提案

AIを含めたシステム開発においては、どのケースなら対象となりうるか、目標の精度を担保できるかどうか、必要なデータの質はどのレベルか、等やってみなくてはわからない部分が多いのが現状です。また、OCRのサービスもそれぞれ特徴があり、選定するために検証する必要がありました。

そこで、いきなりシステム開発をするのではなく、事前に業務要件を満たせるかどうかを検証し、それを踏まえて開発を検討するフローをご提案しました。

検証を踏まえたフロー

「PoCの必要性を提示しても、時間とコストをかけて実現できるかわからないことを検証する、ということに対して納得される企業は少ないのが現状です。ベンダーに『できます』と言われて大きなコストをかけてシステムを発注した結果、期待と乖離したものができてしまい、投資回収できなくなるケースもあります。今回は、お客様がPoCの必要性にご納得いただき、常に理解を示してくださったたことが当社としても大変ありがたく、進めやすかったです。」(データインテリジェンスチーム 佐伯 佳則)

現地調査によるデータ収集と対象範囲、サービスの選定

実際に現地に伺い、複数の端子台を撮影させていただいたところ、接続にいくつかのパターンがあることがわかりました。そこで、まずは全体の主となる、文字が明瞭で且つ文字の向きが揃っているパターンを「基本」として調査対象とし、効率化の効果を測定することをご提案しました。

今回はコスト面から専用のAIモデルを作ることはせず、各テキスト検出サービスを、「コスト」「精度」「レスポンス」の観点で調査して最適なものを採用しました。

実現可能性の検証および報告

今回は端子台と線の接続の状態を取得する必要があることから、文字を検出して認識するだけではなく、検出した文字の位置を特定し、どの端子番号と線番が接続しているかを特定する手法について調査を行いました。

また、接続状態を特定する精度の向上という観点でも調査しました。具体的には、画像に対してグレースケール化、回転、トリミング等の加工を加えることで精度が上がるかどうかや、出力された文字が正しいかどうかの「信頼度閾値」の最適値、端子と電線の位置情報(接続情報)を正しく取得するための補完機能の検証を行いました。

結果、今回の調査対象である基本パターンは文字の読取りが可能であり、うち60%程度は位置情報(接続情報)を正しく取得できることが検証できました。また、残り40%は補完機能により対応できる可能性も見えてきました。

電線や端子台の様々な状況下においても、どの程度の精度を保てるか、精度を上げるためにどのような方法があるかも合わせて調査しました。

お客様の声
ご担当者様
プラントおよび建築物の機械・電気設備に関する開発、設計、製作、施工、メンテナンス会社

依頼した当初は、今の技術ならできるだろうと楽観視していましたが、思ったほど簡単ではないということが今回の検証でわかりました。検証のフェーズからご提案いただいたことは、大変助かりました。

これまで、開発を依頼すると「難しい」と断られることもありましたが、今回の検証では、詳細な報告と説明のおかげで技術的なボーダーラインや課題がクリアになり、次のアプローチが検討しやすくなりました。難しい専門用語もある中で、理解していただく姿勢もありがたかったです。

調査の方法や技術的な内容などわかりやすく教えていただいたこともたくさんあり、期待以上のアウトプットをいただきました。