KDL BLOG

2018.05.15
KDL社内・社員

科学・技術とアートの融合を!マイク・スタッブス氏が来訪されました

リバプールのメディア・アート・センター、FACT(Foundation for Art and Creative Technology)ディレクターであるマイク・スタッブス氏が神戸市の方とともにKDLに来訪され、KDL代表取締役の永吉、取締役の村岡と意見交換会をさせていただきました。

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リバプールと言えば、ビートルズ。クリエイティブに垣根はなく、意見交換はビートルズの話しから和やかに始まりました。

KDLの事業説明では、主にセキュリティ事業、VR/AR事業、AI、IoT事業について村岡よりご紹介させていただきました。

科学にアートが加わることの可能性

まずマイク・スタッブス氏が興味を持たれたのが、雲の画像を撮影し、AIで解析するプロジェクト
海上から見た雲の写真のデータセットが世界のどこにもないので、学習データを集めるために、船にカメラを設置して撮影しているというところで、「ターナー(ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー)は海上の絵を書き続けていました。」と一気にアートの話に。

「アーティストもこのプロジェクトに入れることを考えてみてはどうか」というご意見がありました。「なぜ、アーティスト??」という私たちに、「Cape Farewell(ケープ・フェアウェル)」というプロジェクトをご紹介くださいました。

ケープ・フェアウェル・プロジェクトとは、2001年に始まった、科学者と作家、アーティスト、デザイナー、ミュージシャン、およびメディア関係者などからなる国際チームが、北極圏を巡りながら地球環境と気候変動について考えるという試みだそうです。

複雑な気候変動や見たこともない景色を、アートを通じて世界に分かりやすく伝え、またアーティスト自身もこれまでに見たこともない景色を見ることで、クリエイティブな作品作りに役立てる効果がある、という取り組みとのこと。

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データを扱う上で非常に重要な「視覚化」という面ではアートは欠かせないものです。データにクリエイティブな発想をプラスすることで、より新しい何かを、という事業はイギリスでは多いのだそうです。

人は、その人の一面性から物事を捉えるものです。しかし、別の視点から見ると違うものが見えてくるということは非常に多いものですよね。

科学者は研究に対して科学的な立場から物事を見ますが、じゃあそれがミュージシャンや作家、デザイナーならどう見てどう表現するのか?報道のプロであるメディア関係者なら何を伝えるのか?そういう意味で、膨大な雲のデータをアーティストがどのような目線で捉え、どう表現するか?が面白い取り組みになるのではないか、ということです。

また、科学とアートの融合の事例として、マルコ・ペリハン氏というスロベニア生まれのアーティストなど、科学をアートで表現するアーティスト達についてご紹介いただきました。天候・気象などの観測データをアートとして表現活動を行っておられる方だそうです。

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リバプールで取り組む分野をまたがった研究

HoloLensのアプリ開発についても興味をお持ちいただきました。このような仮想化技術は、近年パーソナライズ性が高まっている車の業界などでは、色やクロス、アクセサリを仮想空間で見せるなどで活用できるのではないか、というご意見でした。

世界的にバーチャルエンジニアリング(Virtual Engineering)やセンシング技術が進む中、イギリスではエンジニアリング、コンピュータサイエンス、ビジュアライゼーション、製造技術の専門家などが集まって研究するVirtual Engineering Centre(VEC)や、研究機関と企業が集って最先端のセンサー技術の開発を推進する Sensor City などで多様な分野、業種がともに研究しているということ。

「AIやIoT、医療、インフラなど分野をまたがって連携するのは素晴らしいことですね。日本ではまだ縦割りになっているので、その垣根を取り除いていかなくてはいけません。」と村岡も感心した様子でした。

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感覚の共有が依存型社会を変革する

そしてセンサーの話から、禅によるリラクゼーションを視覚化できないだろうか、という村岡の話で心理状態や感覚の表現の話に。

簡単に言うと、禅というマインドフルネス(mindfulness)のプロであるお坊さんのリラクゼーションを視覚化して共有できれば、周囲の方をリラックス状態にしたり、ひいてはマインドフルネスを評価できるのではないか、ということです。

※マインドフルネス・・・現在において起こっている経験に注意を向ける心理的な過程(Wikipediaより)。グーグル社がプログラムを立ち上げ実践したことで世界的なブームとなっている。

これに対してスタッブス氏は、「複雑で依存的になった社会において見るものすべてが刺激になっている。渋谷に行ったけど、音も目で見るものもすべてが刺激で、消費者を混乱させるが、これは資本主義の側面である。内なる宇宙を外に出すということは、それと反対方向の取り組みになるので非常に興味深い。」とコメントされました。

最後に

今回の対談を通して、様々な分野の融合によって新しいモノを生み出す未来への可能性を、非常に強く感じました。

KDLは、様々な分野との協業を進め、新しいものを世に送り出すという取り組みを進めています。日本の優れた産業同士を融合して、世界で戦えるサービスを生み出していけるよう、今後も突き進んで参ります。

マイク・スタッブス様、神戸市の職員の方々、ありがとうございました。

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マイク・スタッブス氏プロフィール

芸術と様々な人々そして創造的な技術が出会うメディア・アート・センターであり、また、新しいメディア芸術の形式や意義深い社会参加プログラム、クリエイティブ業界と連携した人材開発の協働と提案において英国で主導的な役割を果たしている組織でもあるリバプールのFACT(Foundation for Art and Creative Technology)ディレクター。幅広い芸術・メディア活動を知悉する彼の芸術分野におけるリーダーシップ、展示企画力、情報発信力は国際的に認識されており、これまでに350以上の展覧会プログラムを協働プロデュースしている。
また、映像作家としてのスタッブスの作品は、越後妻有アートトリエンナーレでのバーバラ・ロンドン賞を初めとする国際的に認知された多くの賞を獲得している。(デザイン・クリエイティブセンターKIITO Webサイトより)

松丸

筆者:松丸恵子

広報室