KDL BLOG
8月3日、神戸のKDLセミナールームで「訪日中国人インバウンドマーケティングを支援する アリババグループが提供するAlibaba CloudとAlipayセミナー」をソフトバンクとアリババの合弁会社であるSBクラウド株式会社様、中国のモバイル決済「アリペイ(Alipay/支付宝)」を日本で提供する株式会社ユニヴァ・ペイキャスト様と共同開催いたしました。
アリババグループは長らく規制に守られ続けた中国で自国向けのIT企業として成長を続け、今や世界トップの流通総額を誇る大手IT企業となりました。これまでアリババの売上市場は8割近くが自国である中国でしたが、その巨大経済圏から更に、世界に進出し始めています。
セミナーでは、アリババグループが提供しているパブリッククラウドAlibaba Cloudの現状や活用モデル、中国のモバイル決済アリペイの日本国内展開、中国人観光客の消費動向などをご紹介いたしました。
今回は、その概要をレポートします。
ECや決済、街のインフラ基盤にも利用されるアリババクラウド
まず、SBクラウド マーケティング統括部 大石氏より、中国最大のEコマース企業アリババグループが提供する、Alibaba Cloudを活用したサービスの現状や中国での消費活動の現場などについてご紹介がありました。
SBクラウドの大石氏は、中国アリババグループではテクノロジーとデータを駆使し、オフラインとオンラインが融合したリテールビジネスを戦略とした「ニューリテール」を戦略としていることを紹介し、中国の消費の基盤や最新技術を駆使した店舗など具体的な中国での活用モデルを紹介されました。
スーパーなどの店舗に入った消費者が商品をカートに入れることなしにスマホコードを読み取って買い物をし、スタッフが店舗で品物を集めてあとでバイカーが届けるスタイルの購買の現場映像には衝撃を受けました。このテクノロジーの基盤にアリババクラウドが使われているそうです。
バーコードを読み取らずに商品を持って帰ってしまう人もいるのでは?という心配が頭をよぎりましたが、実は、顔認証によるレジや画像解析によりセキュリティチェックを行なっているそうです。もしも不正が合った場合は与信力が低下し、決済を利用できなくなるため不正防止もできているとのこと。
また、ECだけではなく、街中に設置されたカメラの画像によって自動車の事故や交通の状況をAI分析して渋滞を軽減したり、救急車の出動時の最速走行ルートを分析するなど、街のインフラ基盤としてもアリババクラウドが普及しているとのことでした。
アリババクラウドでは、2018年8月現在190程度の機能が提供されており、日本ではそのうち50程度の機能が提供され、今後も増える予定だそうです。
「中国特有のネット事情にも左右されず、日本での決済も簡単。且つ中国のクラウドでも、安全に提供させていただいています!」と大石氏。
アリペイが店舗をプロモーションしてコミュニケーションを支援する
次に、株式会社ユニヴァ・ペイキャスト営業部 沖氏より、中国でのモバイル決済の55%のシェアを誇るアリババグループのモバイル決済サービス「アリペイ」を使った、訪日中国人向けのインバウンド対策の事例などをご紹介いただきました。
中国では、偽札の横行や貨幣があまりきれいではないこと、最高額紙幣は100元(約1500円)と通貨の単位が小さく使い勝手がよくないなどの理由で銀聯カードやアリババの「アリペイ」、テンセントの「ウィーチャットペイ(微信支付)」などのモバイル決済が台頭したそうです。
中国のモバイル決済の市場は、2013年には19兆円だったものが2014年でこの時点で日本の国家予算レベルの95兆円に達し、2016年には約 616 兆円に達しています。金額が大きすぎてピンと来ませんね。
アリペイ決済を日本の店舗で導入すれば訪日中国人が決済しやすいことに加え、スマホの位置情報と連動してお店に促す機能で集客にも寄与したり、サインも不要でスマホひとつで決済できるため、支払い時のコミュニケーションが容易に行えるなど多くのメリットがあることをお話されました。
また、アリペイが1年の半分はキャンペーンを開催しており、期間限定でのキャッシュバックやクーポンがアプリから告知されるなど、店舗側が手間やコストをかけることなくプロモーションが可能となる、とのことでした。
実は韓国のkakaopay ・フィリピンのGlobeペイなど、世界的にもアリペイが基盤となってその国向けの言語、通貨にローカライズされた決済システムを提供している、という企業も増えているようです。
データで見る訪日中国人のショッピングツーリズム
最後に、KDLのデータソリューション事業部長、山口より、アリペイの消費データから見えてきた、訪日中国人の観光動向や課題についてお話しました。
中国の旅行消費は、半分程度が買い物、残りは1/4が宿泊費、その他は飲食費と交通費だそうです。「爆買いは収束した」という話題も聞くものの、実はトレンドが変化しながらショッピングツーリズムを楽しんでいる、という傾向があります。
アリペイのデータからは、買い物ニーズや消費場所、観光消費の傾向がわかります。
山口は、日本地図を図示しながら、訪日中国人に多い観光ルートとアリペイによる決済場所などを照らし合わせ、例えば、成田空港→東京→富士山→名古屋→大阪の、言わゆるゴールデンルートでは入り口と出口で決済が多く、ルート途中で消費行動を促せていない、など課題がある、など具体的な例を交えてお話しました。
他のルートでも滞在時間が短かったり、そこで昼食は取るが宿泊に至らないことが多いなど、アリペイのデータから見えてきた訪日中国人の傾向と観光の課題についてご紹介しました。
自治体や店舗の方、交通機関の方など様々な業界の方にご参加いただき、大変ご好評いただきました。暑い中ご足労いただき、ご参加いただきました皆さま、ありがとうございました。
筆者:松丸恵子
広報室