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NHKディレクソンに参加させていただきました(地方編)

マーケティング室の舟橋です。

去る2月16日(土)に、渋谷で行われた「NHKディレクソン 全国大会」に、メンターとして参加させていただきました。また、それに先立ち、昨年の6月16日(土)に熊本放送局で「NHKディレクソン in 熊本」に、12月2日(日)に徳島放送局で「NHKディレクソン in 徳島」に、審査員としても参加させていただきました。そこで、本ブログでは「地方編」として熊本と徳島での体験を報告します。続く「全国編」は次のブログでご紹介します。

「ディレクソン」とは?

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まずは、この「ディレクソン」とは何かをご紹介します。

最近「ハッカソン」や「アイデアソン」といった言葉を耳にすることが多くなりましたが、これらは「ハック」+「マラソン」、「アイデア」+「マラソン」の造語であり、複数の参加者でチームを作り、アイデアを出し合ったり、実際のものづくりを手掛けてその成果を競い合ったりする形のイベントのことを指します。異業種・異分野のアイデア・ノウハウ等を組み合わせて新たなものを産み出すオープンイノベーションの手法として注目されています。

この手法をNHKが自社の番組を変革するために使おうと始めたものが「ディレクソン」です。具体的には、「公募で集まった視聴者全員が『ディレクター』になって地域を元気にするアイデアを競い合う」形のイベントを主催し、「最優秀アイデアをNHKが全力サポートして番組化・サービス化」するというものです。これを、2017年5月以降、各地のNHK放送局で地域の視聴者と共に開催してきています。

「NHKディレクソン in 熊本」に審査員として参加

このNHKの新たな試みの2年目となる2018年の6月16日に、熊本で開催された「NHKディレクソン in 熊本」に審査員として呼んでいただきました。

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熊本ディレクソンの審査員の方々(筆者は右から2人目)

なぜ私が呼んでいただけたのか。それは、熊本での開催が、2016年4月14日に発生した熊本地震後の復興の中で「熊本の笑顔を全国に広げよう!」というテーマと関連しています。私が所属する神戸デジタル・ラボも1995年1月17日の阪神・淡路大震災を経て、同年10月に設立となったことと、私自身もこの大震災がきっかけとなり、様々なボランティア活動を続け、現在は「TEDxKobe」の代表や、クロスメディアイベント「078」(ゼロ・ナナ・ハチ)の実行委員などをさせていただいているためです。

阪神・淡路大震災後の神戸がどのように復興してきており、街の人々がどのように関わっているのかを知っている人間として、熊本で生まれるアイデアに対してコメント・審査をしてほしいとのことで、過去に「078」にも登壇経験のある、ファシリテーター(司会進行)の河原あずさんとタムラカイさんからお声がけいただきました。

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司会進行の河原あずさん(左)とタムラカイさん(右)

では、実際の内容はどうだったのか?という点ですが、公式サイトでもレポートは出ていますので詳細はそちらを見ていただくとして、私が良いなと思ったのは、その地域ならではの言葉・方言の中に、その地域独自の価値が眠っているという考え方でした。

その端的な例が、今回の熊本ディレクソンで優勝したチームのアイデア「やおいかん」でした。この「やおいかん」という熊本弁は、関西弁でいえば「ようできへん」、つまり、「簡単にはいかない」「手に負えない」という意味で、こちらの思い通りには動いてくれず、普段はゴロゴロしていたり文句を言ってきたりする年配のおじさんを指し示す言葉のようです。ただ、そういった「やおいかん」の方だからこそ、情に厚く、長年熊本の良さ(水や農業など)を守って来てくれたわけであり、その「やおいかん」と都会の悩める若者を出会わせて、そこから若者に何かをつかみ取ってもらおう、という企画でした。

私からも審査の段階で、神戸においても震災後の復興過程で力になったのは、その地域の「人」だったという話をさせていただきました。その意味で、「やおいかん」は、熊本という地域だからこそ存在が認められた「人」であり、その人ならではの価値をポジティブに捉え直し、番組制作のコアアイデアとされており、とても興味深かったです。これからの熊本の復興も、こういった「人」の力で進められていくことでしょう!

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ディレクソン熊本の参加者の皆さん

今回の熊本訪問の際に立ち寄った熊本城も、震災で大きく損傷し、現在修復中ですが、熊本復興のシンボルとしてこれから再び力強くよみがえることだと思います。その際は、また熊本にも来させていただきたいです。

「NHKディレクソン in 徳島」にも審査員として参加

熊本でのディレクソンに参加させていただいてから5ヶ月が経ったある日、再び河原あずさんより連絡をいただきました。今度は、神戸から比較的近い徳島で「NHKディレクソン in 徳島」を12月2日に開催するので、そこにも審査員として来てくれないかというお誘いでした。私としては、前回の熊本でとても勉強になったので、断る理由もなく、徳島にどんな素敵な方々がおられるのかと胸を膨らませて参加させていただきました。

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徳島ディレクソンの審査員の方々(筆者は右から2人目)

徳島のテーマは「魅力全開!徳島をもっと輝かせる番組企画を考えよう!」で、熊本のような震災がきっかけとなった開催ではなかったのですが、隣の兵庫県・神戸市に住んでいても「徳島の魅力」と言われてピンとくるものが確かに多くなかったので(すいません!)、私自身も勉強させていただくとともに、このテーマに対して各チームがどういうアイデアで臨むのかとても興味を持っていました。実際、アイデア出しの段階で各グループの様子を見せていただく時間があったのですが、皆さんとても徳島のことを愛しておられて、徳島の良いものが沢山あるにも関わらず、他地域の方々に十分知ってもらっていないという状況に問題意識を持っておられるのが印象的でした。

こちらもレポートが公式サイトに掲載されておりますので、当日の詳細はそちらを見ていただくとして、私が徳島の現状に対する問題意識として興味深かったのは「都道府県の魅力度ランキング」で下から2番目の46位だという最新結果でした。しかし、この「46位」という不名誉な数字を逆手に取り、「46」をプロジェクト名として掲げた「Project 46」チームのアイデアが最終的に優勝を勝ち取りました。

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「Project 46」の皆さん

このアイデアは、魅力度ランキング46位の徳島の魅力を掘り起こすVTRを作成して、「46」つながりのアイドルグループ「乃木坂46」に届けるというものでした。そして、そのVTRを見た「乃木坂46」に徳島の魅力が伝わり、実際に徳島にコンサートに来てほしいという願いを込めていました。

実は、このアイデア、チーム最年少だった現役高校生「アキちゃん」がつぶやいた一言から生まれたものでした。彼女は「乃木坂46」のファンなのですが、コンサートが地方都市の徳島では開催されず、大阪などでの開催になるので、行きたくても親に反対されるなどの理由で、大好きなのに行けない、だから「乃木坂46に徳島に来てほしい!」という思いをチームでのアイデア出しの時間につぶやいたのです。その声を聞いて、他の大人のメンバーが、なんとかそれを実現してあげたいという気持ちでアイデアがどんどん固まっていきました。その際に、メンバーの中にいた徳島の観光協会で阿波踊りの普及に努めておられる職員の方や、徳島の伝統工芸である藍染(阿波藍)の職人の方などがサポートされ、VTRにも多くの地元の方々が登場され、「乃木坂46」に藍染の衣装で阿波踊りを踊ってもらおうというところまで形になっていったのです。

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アキちゃん(右から2人目)の熱い思いが形に

このように、若者の声を大人が一緒になって実現しようとする姿勢自体が徳島の魅力なのではないかと強く思いました。私の住むまち神戸でも、「若者に選ばれるまち」というフレーズの下で神戸市役所も、「078」の活動も進めていますが、実際にはなかなか若い方々の声を形にしようという動きがまだまだ多いとはいえない状況があり、このような姿勢を私たち大人がもっと持たねばならないなと改めて考えさせられました。こうして実際に作成されたVTRが「乃木坂46」の手元に届き、彼女たちがそれを見て「徳島に行きたい!」というところまでが番組となり先日放映されましたが、その後の動きにも注目したいと思います。

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ディレクソン徳島の参加者の皆さん

以上、地方編として熊本と徳島の体験を書かせていただきましたが、この話には続編があります。「全国編」については次のブログをご覧ください!

「全国編」はこちら