KDL BLOG
KDLIoT班 班長 中西です。
今回は、IoTの導入を「検討している!、「興味がある」という方々を対象に、「IoTの始め方」について当社の取り組み事例をふまえて開発の現場から解説いたします。
事例:須磨水族園におけるIoT実証実験
須磨水族園(スマスイ)の事例「取り外し可能な移動式センサーでIoT導入の実証実験を実施」は、魚などの水族の飼育環境で水環境のセンシングを行ったIoT事例です。飼育、繁殖、研究、教育など幅広いを担う「水族館」という現場において、IoTの活用の可能性を評価することを目的としています。
全体の流れ
この実証実験の流れと、ポイントを解説します。
仮説提案とゴール設定
初期の打ち合わせでは、施設構造や飼育員の業務についてヒアリングさせていただき、現場での課題の掘り起こしと、実証実験において何が得られることが有益なのかの仮説提案を行い、プロジェクトの方向性を決めました。
次に、必要な技術要素とコスト・スケジュールなどを調整し、実証実験でのゴールを設定します。
水族園での課題の一つに、生体の安定飼育に不可欠な「変動要素に対する判断」が、経験を積んだ飼育員でさえも難しいということがあります。今回はこの課題に対し、水温や水質などの水槽の変動要素を可視化し、通知機能を設けたシステムを開発することとしました。
多くの判断材料を飼育員に提示することで、ベテラン飼育員でしか気づけなかった生体の異変に、多くの飼育員が気付くことができるのではないかという仮説です。また、データに変動が見られた際に、異常を事前にAIで予測するという活用の可能性もあります。これらを実証することをゴールに設定しました。
これがうまくいけば、飼育におけるリスクヘッジと飼育員の教育コストの削減というに繋がるはずです。
小さなアップデート単位でイテレーションを回す
ゴールが設定できたら開発を進め、早い段階で現場へローンチします。ポイントは、課題を事前に予想するのではなく、出てきた課題の解決を積み上げながらゴール達成する事を意識すること。細かな粒度での開発と現場へのローンチ、現場からのフィードバックにより、当初の想定から漏れていた課題を洗い出し、現場をテンポ良くアップデートできます。
このサイクルを複数回重ねると、実証実験を終える頃には、仮説検証に加えてこれからの課題や進め方が明確になります。これは、今後のビジネス創出の進め方のスピードに大きく影響します。例えば、今回は水環境だけではなく、水漏れなどの事態も検知すべき仕組みや、企画展示などによる配置変更への対応など、進めるうちにいくつかの課題や改善事項が出て参りました。
<実証実験当初のセンサ。天井に固定したケースからセンサのケーブルが伸びている>
事例の記事にも記載しましたが、この実験の中で移動式のセンサーが使いやすいとわかったこと、そしてそれを様々な形を試しながら実装してみたことは大きかったと思います。
<アップデートしたセンサ。センサーは固定せずフックから吊るして利用>
実証実験のシステムの内容については、こちらのブログで詳細をご紹介していますのでご覧ください。
実証実験を終えて
生体は少しの環境変化でもストレスを受けて体調が変化することもあります。飼育員さんの日々の苦労と命の重み、それがIoT導入により、飼育員さんの負荷軽減実現の可能性を感じた案件となりました。
IoTのお問い合わせは、以前は「何かIoTをやりたいのですが、どうすれば良いのでしょうか?」「IoTの事例を教えて欲しい」など、ビジネス創出につなげるには難易度が高い内容が多かったのですが、近年ビジネス価値の創出や競争力の向上を目的とする、IoT活用の具体的なイメージを持たれたお問い合わせが増えたと感じます。
具体的なイメージがあれば、まずはスモールスタートするところを検討してみてください。
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筆者:中西波瑠
新事業創造係 係長兼、IoT班 班長