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Mixed Reality は産業に何をもたらすのか?KDLがMRのビジネスに取り組む理由
ここ数年、デバイスメーカー各社から様々なAR/VR/MR(以下、xR)デバイスが発売されました。少し振り返ってみると、Oculus Rift(2012)、HTC Vive(2016)、GearVR(2016)、PlayStation VR(2016)、そして、Microsoft HoloLens(2017)など、数多くのプロダクトがグローバルに展開され、世界中の企業/エンジニアたちが「今まで見たこともなかったような新たなデジタル体験」を創造するために力を注いでいます。
また、2019年初頭から2020年にかけて、デバイスメーカー各社が新たな端末を発表・提供開始(予定)など、xR市場が更なる盛り上がりを見せつつある昨今。社員研修や現場でのシミュレーション、コミュニケーション(VR会議)などの産業用途で、xRを活用した先行事例を耳にされるケースも増えているのではないでしょうか。
そして今、デバイスの性能が著しく向上し、破壊的進化を遂げた Microsoft HoloLens 2 がxR業界最大の注目を集めています。
今回は、KDLのMixed Reality(以下、MR)事業を率いる堀尾さんに、MRの最新動向やKDLが目指すMRビジネスの未来について、広報室の松丸からインタビューしてみました。
MRの定義
MRの定義について教えてください
堀尾:AR/VR/MR、それらを総称したxRなど、様々な定義が存在しますが、KDLが推進しているのは、マイクロソフト社が提唱するMRという概念です。このMRという技術(概念)は、「現実世界とデジタル世界を融合させる技術」と表されています。

Microsoft HoloLens 2を使用すれば、リアルタイムな空間認識(高精度)、ハンドトラッキング(手追跡)、アイトラッキング(視線追跡) etc.. を実現できます。
詳しくは、以下動画をご覧ください。
5月上旬に開催された「MR Dev Days」(レドモンド、シアトル)で、実際に Microsoft HoloLens 2 を体験してきましたが、ハンドトラッキングや、アイトラッキングの精度は圧巻でした。CGで表現されたボタンを現実空間のそれと同じように操作できたり、文章を読んでいると視線の動きに合わせて画面がスクロールされるなど、「人(現実)」と「デジタル」の距離が縮まり、「デジタル」が「現実世界」に滲み出してくる時代もすぐそこまで来ているなと実感しました。
AI、IoTがMRにつながる
KDLがMR事業をやる理由とは?
堀尾:KDLがMRに取り組んでいる理由は、MRが「第三世代のコンピューティングプラットフォーム」になり得ると考えているからです。
Windows95の登場で爆発的に普及した、パーソナル・コンピューター(第一世代)、AppleがiPhoneを発表・発売してから急速な広がりを見せたスマートフォン(第二世代)。MRは、さらにその先の時代を担うと考えています。
MRに特化した企業も多いですが、KDLの強みはどこにありますか?
堀尾:近年メディアでも頻繁に取り上げられ、各社が注目する分野に、AIやIoTなどの分野があります。KDLでも約3年前より新規事業部を設立し、これら技術要素を活用した企画やPoC開発&現場導入、ハンズオンセミナー開催など、力を入れています。現在は、AI、IoT単体で実現されている事例も多いですが、MRは今後それらと密接に繋がり、ビジネスシーンでより大きな付加価値/競争優位性を生み出す力になってきます。センサーからデータを吸い上げ(IoT)、収集したデータをクラウドで解析し(AI)、現実空間に視覚的にフィードバックする(MR)ということが近い将来、新しい常識になるに違いありません。そうなったときに、ビジネス向けのITノウハウを幅広く持っていることが、KDLの大きな強みだと考えています。
生産現場にデジタルを授けるHoloLens
Microsoft HoloLensはどのようなものですか?
堀尾:Microsoft HoloLensは、マイクロソフト社が開発しているMRデバイスです。2019年初頭に次世代機の HoloLens 2 が発表され、2019年内には提供が開始される予定です。重量はペットボトル1本程度で、価格は40万円程度と言われています。アメリカのマイクロソフト本社で開催されたMR開発者向けのイベントに参加して実際にHoloLens2体験してきたところ、初代のものからかなりの進化を遂げていました。
他のHMDデバイスと比べてビジネス向けの印象ですが、その違いは?
堀尾:HoloLensがビジネス面において優位だと考えているのは、端末単体で動作可能なこと、またディスプレイが非常に高精細である点です。また、端末はWindows 10で動作しているため、ビジネスには欠かせないOfficeなどのWindowsソフトの利用も可能です。

MRはビジネス領域に何をもたらすでしょうか?
堀尾:MRがこれまでのITと革新的に異なる点は、「人」と「デジタル」の間に「ディスプレイ(平面)」を介さないという所です。これはすなわち場所を選ばずに使うことができるということ。ありとあらゆる産業、特に現場の第一線で活躍されている現場作業員の方にデジタルの恩恵を与えることになります。
既にコミュニケーションや研修、設計などの分野など様々な事例があり、現実空間そのものがデジタルのキャンバスになる時代がもうそこまで来ていると考えています。
KDLの取り組み
KDLが取り組んでいることについて教えてください
堀尾:あらゆる産業シーンでの活用が進んでいくにつれて、今のスマホと同じようにアプリが作りこまれていくことでしょう。そのときに重要になるのは、産業利用には欠かせない「文字の見やすさ」です。この文字の見やすさについて、モリサワさんとフォントの視認性の共同研究をしながら、様々なユースケースを検討しアプリケーション開発を行ってきました。
例えば、商品そのものと説明を空間上に表示するアプリや、看板のデザイン時にデザインやフォントを空間上でリアルタイムに再現できる空間プレビューアプリなどです。
<空間プレビューアプリのイメージ>
展示会やお客様先等で、成果物へのフィードバックをいただくうちに、MRによる購買体験の変化や業務効率化、新ビジネスへのインパクトがぐっと現実味を帯びてきましたね。講演の依頼なども、たびたびいただくようになりました。
ビジネスの鍵はデータドリブン
ビジネスになるのか?という質問が多いと聞きました
堀尾:そうですね。様々な分野の経営者の方にこれまでのような話をすると、非常に関心を持ってくださる一方で、それでビジネスが成り立つのか?利益を生み出すのか?という質問を多くいただきます。これに対しては、MRのメリットはデータ分析であるとお答えしています。
HoloLensには様々なセンサが実装されており、それを活用することが大きなビジネスの鍵となるということです。例えば、動きを認識するセンサ、モノとの距離を認識するセンサ、視線をトラッキングするセンサ、手の動きを認識するセンサなど。
装着して動いた方の行動を、例えば「購入するときにどこを見ているか」「どんな動線で動くか」などの詳細な動きを分析すれば、データドリブンなビジネスとして大きな可能性があります。
ありがとうございました。
最後に
xR市場は、携帯電話が登場したころから20年かけて、今の時代を築いたスマホに例えれば、まだまだガラケー初期の駆け出しの時期です。しかし、今回インタビューを通じて、その凄まじい進化や既成概念の破壊を感じました。AIやIoTとつながってくる部分は壮大に感じる一方で、近い将来にそうなる可能性を実感したインタビューでした。
KDLでは、HoloLens、MRに関するお問い合わせなど承っています。お気軽にお問合せください!

インタビュー先:堀尾 風仁
新事業創造係 MR班

筆者:松丸恵子
広報室