2021年12月 1日 13:00

DXの近道はユーザーに寄り添うことー運動のデータの分析システム「TUNEGRID」

10月に開催された日本マイクロソフト社のイベント「Microsoft Japan Digital Days」の基調講演で、同社代表の吉田氏がハンドボール 用のシューズを履いて登場し、話題となりました。このシューズにはセンサが入っており、スポーツや運動の記録を記録・分析できるシステム「TUNEGRID(チューングリッド)」と連携されています。

今回は、アシックスさんとKDLが共同開発している、このTUNEGRIDについてご紹介します。

TUNEGRIDとは

TUNEGRIDは、シューズに格納されたセンサが受信機と連動し、そのデータを蓄積して運動や移動に関する情報を分析できるシステムです。特徴は、わずか5グラムほどのセンサで動作への負担が少ないこと、そして低コストで導入できること。2018年ごろよりアシックスさんとKDLで開発を始め、2020年よりスポーツ活動や様々な業種の業務現場などで実証実験や導入が進んでいます。

詳細はTUNEGRIDのサイトからご確認いただくこととして、この記事では最近の事例や取り組みについてご紹介します。

TUNEGRID最近の取り組み

スポーツ、教育、就労現場、自治体における様々な取り組みをご紹介します。

スポーツの現場

スポーツ現場においては、ハンドボール、バスケットボール、テニスなどコートで行われるスポーツを中心に導入が進んでいます。スポーツシューズにセンサを埋め込み、コートの周辺に受信機を置いてデータを取得します。

例えば、時系列で選手ごとやチーム全体の活動量をデータで確認できるため、選手の体力の消耗を戦略的にコントロールするトレーニングに役立てられます。また各選手のコート内におけるおおよその位置が分かるため、練習メニューや攻撃パターンによって、どのようなフォーメーションでどのくらい活動しているか、もしくはなぜ動けなかったか、というような分析につなげることができます。

写真
コートのスポーツ

もう少し具体的に考えてみましょう。

例えばテニスでは、一般的に攻撃するときは相手コートに近いエリア、つまりネット寄りの場所でプレイし、守るときは自エリアの後方でプレイします。なぜなら、浅く跳ねて返ってきたボールは早く打ち返すことができるため、相手が体勢を整える前に攻撃できるからです。また、攻撃したボールは主に深い位置に入るため、守る側は深い場所でのプレイになります。

写真:テニスのイメージ

両コートの後方に受信機を設置することで、攻めと守りの状況やそのときの活動量をデータで可視化し、分析に活用することができます。また、選手のバイタル、気温などの環境のデータやカメラの情報などとも連携して、総合的に分析するプラットフォームとしての活用も期待できます。

2021年の夏には全日本ハンドボールチームに導入いただいて、東京オリンピックの練習でご活用いただきました。

教育現場での活用

教育現場では、学生のデータ活用力向上に向けた教材としてもTUNEGRIDをご利用いただいています。これは、スポーツデータの利活用ができる人材の育成を目指すもので、アシックスさんはスポーツデータ収集手法や分析手法を、KDLは計測システムの提供や運用データ分析アプリケーションの開発、運用をサポートしています。

写真
TUNEGRIDのシューズの装着
写真
学生によるデータ分析の様子

海外ではデータ分析の領域として進みつつある「スポーツアナリティクス」という分野ですが、日本ではまだ学べるところは少なく、今後専門人材が求められることが考えられます。

プロスポーツで採用されているシステムを教材として利用できるのも、導入のしやすさがポイントだと思います。

企業の就労現場

アシックスさんは、スポーツシューズだけではなく安全靴や業務用のシューズも提供されています。そこで、そのような現場の課題解決に向けてもTUNEGRID活用の仕組みを開発しています。現場に受信機を複数設置し、従業員の移動のデータを分析して配置の最適化をはかったり、運動量から過負荷ではないかどうか、異常はないかなどの、健康/安全の確保に寄与すべく取り組んでいます。

山陰アシックス工業の工場や、日本ロジテム様の物流倉庫内での事例をこちらで紹介しています。

図
物流倉庫内での利用イメージ

また、人手不足と言われる介護現場でも、介護従事者のデータ計測を実施しています。

介護現場は、バイタルの測定や食事介助、レクリエーションやお風呂の介助などスケジュールが細かく決まっているうえに、想定外の出来事が起こることも多く、介護者が自分のリズムで就労できないことが大変多いそうです。交代で夜勤をすることから、概日リズム(いわゆる体内時計)に影響が出てくる従業員も多いという課題があります。行動量の分析で体調の変化にいち早く気づいたり、繁忙な時間を予測してシフトを見直すなど、過負荷にならないように早期対応することで、従業員の健康を管理し離職率の低減につなげられる可能性があります。

写真
介護施設での実証実験の様子

健康促進や見守りにも

三木市では、高齢者にTUNEGRIDと連携したシューズなどを配布し、運動の促進に向けた取り組みが行われています。それは、受信機を設置したウォーキングコースを作り、高齢者がそこを歩くと歩数や移動量が記録される、というもの。

高齢者の歩数をはかるだけなら万歩計でもいいのでは?と思うかもしれません。しかし、万歩計やスマホだと、自分で装着したりアプリを設定したりする必要がありますし、持ち歩くのを忘れてしまう可能性もあります。シューズにセンサを内蔵するTUNEGRIDなら、靴を履くだけで歩数が計測できてシームレスに利用できます。また、遠隔からデータを確認できるほか、市民のデータを集めて統計的に分析できるというメリットがあります。

子どものシューズにも導入して、通学路の見守りなどの取り組みも進んでいます。どのような場所を経由して登下校しているか、どの時間帯に子どもが多いかなど、感覚ではなくデータで確認することで、これまで以上に効率的で安心安全な見守り体制を構築できる可能性があります。

TUNEGRIDの大きなメリットは、受信機を含む分析システムを、様々な用途に活用できるということ。利用者が増えれば、ひとりあたりのコストは減り、用途も広がります。もともとはウォーキングを目的とした導入でも、災害時などの有事には、どの避難所に誰がいるのか、避難できずにいる人がいないかを見える化するなども期待できます。

2021-11-15_183926.jpg
TUNEGRIDによる様々な課題解決(出典:アシックス登壇資料)

核家族化が進み、地域のつながりが昔に比べて薄くなりつつある近年ですが、このようにデジタルによって地域の見守りを仕組みで補っていくのは時代に沿ったアイデアだと感じました。

まとめ

運動量をデータ化するようなソリューションは従来よりありますが、センサが動作の負担になったり、導入コスト面でスケールしにくいという課題がありました。TUNEGRIDは装着・コスト両面で導入ハードルを徹底的に下げることを最も重視し、多くの方にご利用いただける「Lite DX」ソリューションとして開発しています。カメラ映像やスマートウオッチなどと連携することとで、様々なデータ分析のプラットフォームとしても活用できます。

開発当初から取材を重ね、実証実験からプロダクト化、様々な用途への広がりを見て感じるのは、「ユーザーを中心に考えたもの」だからこそ受け入れられたという実感です。

以前アシックスさんより「『データを活用したい』『データがとれたらいい』と人は言うけど、実はそれには条件がある」というお話を伺いました。それは、重いものを装着して不便になったり、膨大なコストがかかったりすることがない、ということです。

「とにかくユーザーに寄り添ったものを」と、まずはユーザーに負担なく取れるデータから始め、様々に拡張できるプラットフォームとして開発を進めて行ったTUNEGRID。これからの普及に期待が高まります。

使ってみたい、とお考えの事業者の皆様、ぜひお気軽にお問い合わせください。

参考:開発ストーリー

4月に開催されたKDLのオンラインイベント、KDL DAYでは、TUNEGRID開発までのストーリーをご紹介しています。ぜひご覧ください!

中西

監修:中西 波瑠

エンゲージメントリード

松丸

筆者:松丸恵子

エンゲージメントリード

本件に関するお問い合わせ

お問い合わせフォームより、お気軽にお問い合わせください。

ページの先頭に戻る