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マーケティングの基礎を改めて理解しよう Vol.3

マーケティングの基礎を改めて理解しよう Vol.3

こんにちは。エンゲージメントリードチームの岡(Business Strategist)です。

自社サービスをどのようにして強くし、求めている人に届けるのか?自社サービスの拡販を手掛けている方の多くが悩まれていると思います。もちろん私もその一人です。

このブログは以下のことでお悩みの方向けです。
 ・自社サービスをもっと売れるようにしたい
 ・新しいサービスを考えようとしている
 ・自社サービスの販促に関して何から手を付けていいかわからない
 
少しでも自社サービス拡販に悩むみなさまのお役に立てるよう、知識の整理や情報の提供をしていけたらと思います。
 
前回のVol.2ではマーケティングに重要な「マーケティング・マネジメントプロセス」の概要とそのフローの前半を見てきました。(前回の記事はこちら

今回はマーケティング・マネジメントプロセスの中でも重要なターゲットマーケティングの部分を掘り下げていこうと思います。

マーケティング・マネジメントプロセスの復習

マーケティング・マネジメントプロセスとは、アメリカの経営学者フィリップ・コトラーが提唱した、マーケティング活動を効果的かつ安定的に行うための進め方の枠組みのことです。マーケティング・マネジメントプロセスは、以下の図のとおり、「マーケティング環境分析」「マーケティング目標設定」「ターゲットマーケティング・市場細分化」「マーケティングミックスの開発と実行」のフローで進めます。今回は赤枠で囲んだ「ターゲットマーケティング」について掘り下げてみます。マーケティングプロセスマネジメント・ターゲット・マーケティング.png

ターゲットマーケティング

マーケティングの目標が設定された後、その目標を達成するための市場選定が必要になります。Vol.1でお話したマーケティング1.0の大量生産大量消費の時代とは異なり、消費者の嗜好や価値観が多様化している現代では、対象となる市場を細分化し、その標的市場に最も効果的なマーケティング手法を投入していくことが求められます。これがターゲットマーケティングです。

ターゲットマーケティングは下記に示す3つの手法と手順が代表的です。これよりこの3つの手法を詳細にみてみましょう。

1.市場細分化

市場細分化とは、市場を一定規模の同質的なニーズを持つ消費者の集まりに区分していく手法です。消費者の価値観の多様化を考慮しつつも、細かくしすぎると一定規模にならず市場としては魅力がありません。そういった点を注意しつつ次のような基準を使って区分していきます。

地理的(ジオグラフィック)基準

地理に即した基準を用いるものであり、人口密度や分布、地区地域特性、または気候や生活習慣などにより地理的に区分を行います。季節性の商品や地域の特性に合わせた商品などに利用できます。

人口統計的(デモグラフィック)基準

人口統計的な基準を用いるものであり、国籍、性別、年齢、学歴、職業、所得、宗教、家族構成などにより市場を細分化します。「M1」や「F2」など性別+年代での分け方は耳にされたこともあるかと思います。SNSやWebメディアが有効な年代、紙のチラシが有効な年代、未就学の子どもがいる世帯など、比較的メジャーで使われやすい基準となりますので押さえておきたい基準です。

心理的(サイコグラフィック)基準

前出の人口統計的(デモグラフィック)基準では区分できない、消費者の内面や心理面を基準とするものであり、ライフスタイルや価値観など感性に紐づく価値基準です。市場の成熟に伴い、近年ではより重要視される基準となってきています。消費者の内面のため統計を取りにくい分野ではありますが、アンケートによる直接収集や顧客行動の分析などで収集が可能であり、最近はAIによる行動分析と相まってより盛んに分析される基準です。

行動変数基準

消費者の該当製品に対する態度、反応、使用度合い、知識などに焦点を当てて細分化する基準です。使用率などからロイヤリティ(製品やブランドに対する忠誠心)が判断できる場合もあり、心理的基準が行動として現れた指標とも言えます。Web技術の進化と利用の促進により、近年ではより分析が進んでいる基準のひとつです。

先にも述べたように、市場細分化は細ければ良いと言うものでありません。有用性の要件として「測定可能性」「到達可能性」「維持可能性」「差別化可能性」「実行可能性」等ありますが、最も重要なのは市場の規模を表す「維持可能性」です。いくら魅力的でマーケティング施策も実行可能な市場だとしても、規模が小さければ十分な収益を得ることができずビジネスとしては成立しません。そういった観点からもターゲットマーケティングはビジネスを左右する非常に重要なポイントとなります。

2.標的市場の設定

市場細分化が完了したら、次に自社製品の標的をどの市場セグメントを標的とするか決定する必要があります。ここでは代表的な標的市場の設定パターンとしてP.コトラーとエーベルの考え方をご紹介します。

P.コトラーによる標的市場設定パターン

・無差別型

細分化された市場感の差異を考慮に入れず、単一製品とマーケティングをすべての市場に投入していく方法です。製造コストやマーケティングコストは低く押さえられますが、単一商品ですべての消費者を満足させることは難しくマーケティング1.0に近い考え方と言えます。

・差別型

細分化された市場ごとにニーズに適合した製品とマーケティングを複数市場(ターゲット)に対して投入していく方法です。ここの市場(ターゲット)ニーズに対応するため全体としての売上向上は期待できますが、市場ごとにマーケティングミックスを構築するためコストが増加する傾向があります。

・集中型

細分化された市場の中から特定の市場に限定してその市場に最適な製品とマーケティングを投入していく手法です。経営資源の有効活用がはかれるものの、市場に対するリクスを分散させることができないデメリットがあります。

エーベルによる標的市場設定パターン

エーベルは標的市場と製品をマトリクスとして捉え、より細かく分類した5つのパターンを提示しています。資本力のある大企業は全市場浸透型を選択することも可能ですが、中小企業等は単一セグメントに集中して大企業が入ってきにくいニッチな分野で利益を上げることも可能です。製品に強みを持っていれば製品専門型、特定のマーケットに強ければ市場専門型など、自社の製品や強みを生かした戦略を取ることが重要になってきます。エーベルの標的市場設定パターン.png

3.市場ポジショニング

市場ポジショニング分析では、下記のような知覚マップを作成して、消費者が認識(意識)する製品の位置づけを表し評価、分析を行います。新製品であればどのポジションに置くか、既存商品ならどこにリポジショニングするかを検討します。ポジショニングには競合他社製品で分析することもあれば、自社製品同士のカニバリゼーションを防ぐために自社製品同士で分析することもあります。また、既に多くの企業が製品を展開しているレッドオーシャン、未開拓の市場のブルーオーシャンを見極めるのにも役立ちます。いずれにしてもどの指標で分析するかも重要であり、消費者の認識だけではなく他社と差別化できる指標を探しポジショニングすることも必要となります。ポジショニング(知覚)マップの例.png

最後に

マーケティングの基本は「誰に、何を、どのように」です。そこに対して様々なフレームワークを駆使しながらアイディアを出し、更に世の中にある2次データなどと掛け合わせて判断・実行していきます。
とは言え、どの段階でどのフレームワークが有効なのか、どういったデータをどこから持ってくればいいのか?このあたりはなかなか判断が難しいですよね。手前味噌ではありますが、そういった皆様のために神戸デジタル・ラボのご提供するデジタル・コラボレーションサービスがあります。お時間ありましたら特集記事だけでもご覧になって下さい。

次回は、マーケティングプロセスの中から実行段階である4P戦略のうち「価格戦略」について詳しく見ていきたいと思います。

岡 龍弘

筆者:岡 龍弘

エンゲージメントリード Business Strategist