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安全・安心な建設現場づくりの仕組みと効果 ~アザスは何を変えるのか【課題編】~

神戸デジタル・ラボ(KDL)では、JGC Digital 株式会社が提供する、建設現場向けのコミュニケーション促進アプリ「アザス」の開発、運用を支援しています。
このたびアザス事業の責任者、倉田浩二郎さんより、アザス事業の背景、開発・運用秘話などに関してKDLで講演いただきました。

松丸

倉田 浩二郎 さん
JGC Digital 株式会社 アザス事業 プログラムマネージャー
2011年、日揮株式会社に入社。LNG受入基地の設計業務に従事後、2016年からデジタル系の新規事業開発に関わる。プラントの運転データ分析、IT事業会社の立ち上げ、日揮グループDX計画「IT Grand Plan 2030」の立案・遂行などを行う。現在はアザス事業の責任者。

アザスとは

アザスとは、建設現場で働く作業員の方々の日々の行動や習慣を現場監督が褒める文化を醸成することで、安全な現場環境の整備や安全文化づくりを支援するサービスです。褒めることで作業員にポイントが付与され、モチベーションにつながるだけではなく、ポイントと景品の交換時に会話が生まれ、コミュニケーションが促進されるように設計されています。

2023年のリリース後、順調に建設現場への導入が進んでいます。

アザス公式サイトはこちら

アザスのアプリの画面サンプル

アザス事業開発の背景

アザスの開発は、プラント建設などの総合エンジニアリング事業を展開する日揮ホールディングスの現場における課題から始まりました。

建設現場における安全管理

建設現場における安全管理は、作業員の安全と健康を守るだけでなく、プロジェクト全体の品質・コスト・スケジュールにも大きな影響を与える重要な要素です。

従来は「ルールの確立と遵守の徹底」が一般的な解決策と考えられてきましたが、近年では、「個人の意識」が安全の鍵を握るという考え方が、建設業界をはじめ多くの業種で重要なアプローチとして広がっています。

例えば、「ルールの確立と遵守」は必要なことですが、言ってみれば「命令に従う」ということです。「やらされ感」に対する抵抗があったり、最低限の遵守になりやすいという特徴があります。また、ルールのみに頼ると、「言われたからやる」という心理に陥りやすく、形だけの安全行動になりがちです。対して「個人の意識」ならば、自分の意思で行動を選択しているため納得感があり、持続しやすいというメリットがあります。つまり、主体的で継続的な安全行動を促すための働きかけが重要ということになります。

日揮グループでは2011年より、「個人の意識」への働きかけを「いいふれあい運動(IIF活動)」と称し、「人間関係の構築」と「互いを気遣う文化」の醸成に取り組んでいらっしゃいます。

「日揮グループにおける安全への取り組み いいふれあい活動(IIF活動)の実施」に関するスライド画像

安全管理における課題

「個人の意識」を向上するにも、様々な課題があります。

意識が持続しにくい

現場では、「事故がない」のは当たり前。事故が起きた時だけニュースになるのが現実です。当たり前の日々で、個々が安全管理に対して強くモチベーションを保ち続けるのはなかなか難しいものです。

「例えば、高いところで作業するときは道具が落下しないように吊り下げる、海の上で作業するときはライフジャケットを着用する、などのルールを定めていても、『昨日まで安全だったから今日も大丈夫だろう』という心理的なバイアスがかかってくるものです。こういったルールの徹底などのアプローチだけでは難しいのが現状です。」(倉田さん)

現場の作業員の入れ替わり

建設工事は、電気、配管、鉄骨、内装など多種多様な専門技術が必要なため、一般的に多重請け構造となります。そして効率よく進めるために作業単位で分担されるため、工期中に作業員の入れ替わりが度々あります。そのため、安全管理に関するルールの徹底が難しかったり、指示系統が複雑になる傾向があります。

多重請け構造の課題を表したスライド

例えば、1か月間の現場に入った作業員に分厚いマニュアルを渡しても、すべて読んで頭に入れるモチベーションは生まれにくいでしょう。マニュアルは読まずに、個々の経験に基づいた行動になりがちなのだそうです。

作業員の心理面

作業員は、安全ルールをきちんと守っているときは何も言われず、守れていないときだけ怒られる、という体験をしている方が多いことにも驚きました。

安全管理は、「違反を見つけて注意する」という方法になりがちです。作業員の行動は、「怒られるのが嫌だから守る」「監督が見ているからやる」という動機になり、負の心理が働きます。現場監督に対して「怒られる」と感じると、監督とのコミュニケーションがうまくいかず、現場の雰囲気が悪化する可能性もあります。

この心理面の問題は、新規就労者の減少にもつながっているのだとか。

国内作業現場の管理課題を表したスライド。災害度数率の下げ止まり、熟練工の引退、新規就業者の減少、外国人労働者の増加、働き方改革など、と記載されている

「熟練工の皆さんに、『自分の子どもにも同じ仕事をしてもらいたいですか?』と聞くと、『Yes』という人はほぼいないそうです。なぜかと聞くと、理由のひとつは『監督さんから怒られた経験しかないから』とおっしゃいます。ならば、現場で働く方々の関係性の改善をしよう、という話になりました。これが我々のスタート地点になっています。」(倉田さん)

後編【改善編】に続きます。【改善編】では、ここでご紹介した安全管理の課題に対する「アザス」のアプローチや現場改善の仕組み、導入現場からの声、効果をご紹介します。

後編:安全・安心な建設現場づくりの仕組みと効果 ~アザスは何を変えるのか【改善編】~

松丸

筆者:松丸恵子

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