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音声UIのビジネス活用に向けた課題と進め方

2019年5月から6月にかけて試験運用を実施した、音声でペンギンに関する質問に自動回答する「マゼランペンギン型解説システム」では、多くのメディアに取り上げていただきました。あの解説システムが、このたび夏休み企画としてパワーアップして期間限定でスマスイに再展示されることになりました!

このブログでは、試験運用で見つかった課題や対応、施した工夫などを、広報室の松丸からご紹介いたします。VUIのビジネス活用の際に、ご参考になれば幸いです。

このペンギン型解説システムの経緯は開発時のブログをご覧いただくとして、試験運用開始後は様々な課題にぶつかり、一般の方の利用に耐えうるまでに数々のアップデートが必要でした。

<展示の様子>

試験運用における課題と対応

認識精度がイマイチ

開発時のブログでも触れましたが、開発後に実際の設置場所で試したところ、オフィスでテストしたときよりも音声認識の精度がいまひとつでした。実地検証だったのでスピードが求められるし、システムを大きく作り替えるのも現実的ではない。。

反響音が小屋を伝動してマイクに影響していると仮説を立て、小屋内部に吸音材を設置してみたところ、かなり精度がよくなりました。

<小屋の内側に取り付けた吸音材>

近づいても質問されない

スマスイの担当者の方より、利用している様子を観察する中で、「前には立ってくれるけど、ボードも用意していたけど読んでくれない方も多いようなので、AI側から話しかけられないだろうか」というフィードバックをいただきました。この対策として、質問が検出されなかったら、質問を促すセリフを呼びかける機能を追加しました。

<囲まれているけど質問はされていないことも>

具体的には、人感センサで会話モードを起動したあと、一定時間に質問がなければ、システムから「質問に答えるよ」等の呼びかけをするものです。

たまに落ちてるorz

ネットワークが不安定などの際に、質問の回答を取得できずにペンギンがフリーズしたり、何らかの障害や外的要因でプログラムが終了してしまうケースがありました。稼働を監視し、異常終了やフリーズなどのエラーがあれば、自動的に再起動する機能を実装しました。再起動時には通知して、異常時に備えられるようにしました。

ネットワークに関しては、質問から回答までの速度にも影響するところのため、Wi-Fi機材を変更したり音質を調整するなど、様々な対策を講じています。

羽ばたきや考え中の動作調整

羽をパタパタさせる機能を実装していましたが、このパタパタの頻度や速さ、タイミングは微調整しています。例えば会話中は会話に集中してもらうために羽ばたきをしない、羽ばたきの速さは本物に近づける、など。また、回答を探している間のLEDの光り方なども、調整しています。

壊れる

展示前、スマスイさんからは強度についていろいろとご指摘をいただき、かなりがっちりと固定してありました。

えー?触る人いますかね?なんて思ってましたけど、実際に設置してみたら、遠くから走ってきていきなりぬいぐるみを鷲掴みにするちびっ子を見かけてめっちゃ驚いた(笑)。人感センサが押し込まれていたり、装飾がはぎ取られてしまったり、一般展示のハードルの高さ感じました(汗)。

<押し込まれた人感センサ>

よい子のみんな、展示物は大事に扱いましょうね。。。

とはいえ、真剣に質問している様子は微笑ましいですね。

シナリオのアップデート

試験運用中の全ログ数は4079件。うち、1200~1300件はテストではないでしょうか。

シナリオは、ログや質問している様子を見ながら、随時アップデートしました。もともとは生態に関する質問に答える想定でしたが、実際に発話された質問は、「何歳ですか」「体重は?」「頭はいいの?」のような質問やが多く、また「がんばってね!」や「アンジェリーナ!」のように、キャラクターに向けた呼びかけもありました。

「今何時?」「天気は?」という質問があったりするのは、スマートスピーカーの普及を感じますね。

また、せっかく音声で回答できるのだから、効果音やBGMなど音声ならではの回答も増やしてみました。例えば実際のペンギンの鳴き声を回答に入れたり、「踊って」というと曲が流れてダンスをしたり、という具合です。

質問と回答のアップデートをスマスイさんの方で手軽に行っていただけたのは大変好評でした。当初は約6割程度だった回答率(質問に対して意図した回答ができている割合)が、最終的には約8割となったそうです。

そして再展示へ

今年の夏休み期間に、なんとペンギン型解説システムが再展示されることになりました!試験運用中の課題を受けて、今回は展示の見せ方をバージョンアップ。

生態に関する質問が少なかったことから、もっとペンギンの生態に興味・疑問を持ってもらえるよう、アルゼンチンのペンギンの様子を企画の背景装飾として取り入れました。

また、夏休みで大勢の来園者が見込まれるため、人混みの中でも音声認識しやすいよう、音声の入力部分を集音しやすい形状にしました。壊れる頻度も高くなりそうなので、ペンギン自体を入力部から離して展示しています。

aipengin_renew003.png

試験運用の際にも感じましたが、こんな風に興味を持ってもらえるような展示方法や装飾、見せ方の工夫など、スマスイさんさすがです!私たちでは思いつかないようなパネルの展示方法や、アイデアの提案もたくさんいただき、他業種が共に創り上げていくことで可能性を広げていけるのだと感じました。

展示は7月27日から9月1日までの予定です。来園された方、ぜひSNSで発信お願いします!

音声UIのビジネス活用は、まだまだシーンや工夫によってさまざまな可能性がありそうですね。KDLでは音声UIのビジネス活用に関するご相談、ご依頼などもお受けしています。お気軽にお問合せください。

【追記】アップデートされた展示

アップデート後の展示です。Twitter発信してくださった皆様、ありがとうございます!

#スマートスピーカーを遊びたおす会@torisankanasan が発表されていた #スマスイ のVUI ペンギンを見てきました
子どもが話しかけやすいようにメガホンの高さや、話しかけが無いとペンギンから話しかけてくれるなど、色んな工夫がありました
話しかけた動画はリプライでpic.twitter.com/9eDAAxCcNH

— sumihiro3 @ ヒーローズリーグ 2019 LINEヒーロー・kintone 賞 (@sumihiro3) August 11, 2019

いま、スマスイとアルゼンチンは特殊な装置で繋がっています(╹◡╹)
ですので、アルゼンチンに帰ったペンギンAI夫妻と、またお話しが出来ますっピ!
しかも、前よりお話し上手。
9月1日まで、ペンギンについての疑問は、ペンギン(AI)が答えますっピ! pic.twitter.com/sPALgZtbX1

— [公式]須磨海浜水族園 (@sumasui_kobe) August 9, 2019

筆者:松丸恵子

広報室