事例紹介
ユーザー体験を起点にアプリの企画・開発・拡大を伴走支援 神戸散策アプリ「Be Kobe Fun!」
KOBEスマートシティ推進コンソーシアムに参画中の株式会社デンソーテン(以下、デンソーテン)様では、「安心・快適な移動の価値を創造し消費行動の活性化を促す取り組み」の実証実験を予定されていました。実証実験の構想は決まっていましたが、それを実行するにあたり、支援のご依頼をいただきました。
開発に携わったのは、神戸市中央区内の散策によってポイントが貯まるスマホアプリ「Be Kobe Fun!」です。たまったポイントを周辺店舗のクーポンと交換して利用いただくことで、神戸の街の回遊性向上・活性化を目指すものです。デンソーテン様では、本プロジェクトの先に、モビリティやインフラデータと連携させ、移動に関わる時間の無駄を最小化し、よりよいモビリティ社会作りに貢献することを見据えています。
ご依頼を受け、企画、UIデザイン、開発に伴走させていただきました。
支援のプロセス
エンドユーザーの体験デザイン
デンソーテン様では、もともとアプリのアイデアや機能の案があったため、まずはそれらの機能の優先度やデザインを検討するために、ユーザーがアプリを知って活用するまでの体験をカスタマージャーニーマップで可視化しました。
アプリのユーザーの行動と感情を洗い出し、態度変容に必要な機能を検討しました。多くの機能案が挙げられていましたが、すべてを実装するのではなく、ユーザーの体験にコアな機能から着手し、3つのフェーズに分けてバージョンアップを行うこととしました。
フェーズ1:初期開発と実証実験
リアルタイムなUIデザインとユーザー体験起点の開発
予めデザインのたたき台を用意して、毎週の定例で要素を追加したり変更したりしながらデザインや機能について議論を進めました。リアルタイムにUIデザインを変更することで意図を正しく反映することができ、また会議参加者の様々なアイデアや意見を取り込むことができます。
UIデザインを起点にリリース時の機能をまとめ、開発に必要な技術を調査し、開発を進めました。
データ活用を見越した管理画面開発
本プロジェクトは、アプリを利用することで神戸の街の回遊性向上・活性化を目指すものです。そのため、回遊性が向上したかどうか、どうすれば向上するかを継続的に確認する必要がありました。
そのため、人の流れやアプリがどう使われたか、どのようなクーポンが人気か、などを分析できる管理画面を設計、開発しました。
フェーズ2:データをもとにした改善とバージョンアップ
リリース後、追加を予定していた機能開発とともに、アプリで取得したデータや利用者へのヒアリングをもとにUI改善を実施しました。
ゲーミフィケーションを追加
神戸大学の藤井信忠氏(DX・情報統括本部情報基盤センター教授)、森村文一氏(経営学研究科教授)との共同研究によるゲーミフィケーション要素を追加しました。ゲーミフィケーションとは、例えばレベルアップや競争などのゲームで使われるような要素を取り入れ、学習やサービス利用等へのモチベーションを高めようというものです。
共同研究チームとも議論し、累積ポイントによってキャラクターのランクがあがる、という要素を取り入れました。また、ランキングを表示して競ってもらうことでモチベーションの向上につなげるデザインをしています。ランクアップに応じたキャラクターのデザインは、ブラックボックスにすることでワクワク感を促進しています。
※キャラクターデザイン:©JUNBOw(じゅんぼう)様(兵庫県マスコット「はばタン」作者)
改善の例
例えば、アプリでは神戸市中央区内に入るとチェックインする必要がありますが、エリアに入ってもチェックインしていないユーザーが多いことがわかりました。
チェックインする必要があることが分かりにくいのではないか、という仮説を立て、エリア内に入ったら吹き出しでチェックインを促すよう変更しました。
また、ユーザーにとって価値であるクーポンやイベントの情報にあまりアクセスされていなかったことから、ボタンを大きく目立たせるよう改修しました。
アプリを起動はしたが使われていないユーザーが一定数いたことから、「起動後の操作が分からない」という仮説を立て、インストール時にどんなアプリかを紹介する画面(オンボーディング)と、使い方を表示する機能を追加しました。
修正してデータを確認することを繰り返し、利用率を向上させることができました。
また、キャラクターを育てるというゲーミフィケーション機能やエリアに来たユーザーに対するリアルタイム配信など、予定していた機能を追加しました。
フェーズ3:ユーザー拡大の施策に伴走
アプリを公開しても、利用するユーザーが少なければ実証実験は成功しません。フェーズ3では、デンソーテン様が中心となって、登録ユーザーを増やす施策に取り組みました。施策のアイデア出しを行い、具体的な実施策を議論・検討しました。
議論を重ね、紹介やプレゼントキャンペーン、SNS、など施策を実施し、着実にユーザー数を伸ばしています。
イノベーション創出センター
別プロジェクトでアプリケーションの企画‧UXデザイン‧開発を伴走して頂いた際、デザイン思考で進めていらっしゃる点、プロジェクト管理においても円滑で密なコミュニケーションで良い成果につなげていただいた経験から、今回も支援を依頼しました。すぐにプロジェクト推進チームを組成していただき、長期にわたって心強いサポートをして頂いております。
プロジェクト推進にあたっては、カスタマージャーニーマップ作りから一緒に実施いただき、新しい価値創出に繋がったと思います。
アプリの開発においては、弊社のあいまいな要望を言語化していただき、真摯に対応いただいていますし、変更や追加のリクエストにも、柔軟に対応いただきました。また、最適な要件を分析していただいたおかげで、無駄に大きなシステム開発をすることなく、必要なことに絞って進めることができました。
昨年10月から開始した「Be Kobe Fun!」は、開始から1年弱でユーザー数が約1万人に到達しました。
社会実装に向けてはマネタイズが課題となっていますので、今後は車で来街される方をターゲットとした新しいサービスへの展開も考えています。引き続き支援をお願いしたいと思います。